平成21年度 組織・人事事例
第5問(配点20点)
現在、A社は、地元市場の不振と、景気低迷に伴う大都市圏事業の縮小といった厳しい経営状況に直面している。急速な業績回復が期待できない中で、短期的に売り上げを増進させるための具体的施策について、中小企業診断士として助言を求められた。どのような助言を行えばよいか、150字以内で述べよ。
まず題意から考えよう!
題意:短期的に売り上げを増進させるための具体的施策について、どのような助言を行えばよいか
解答の骨子
例1:助言は、〜である。具体的施策は、
①~、
②~することで短期的に売り上げを増進させることである。
例2:短期的に売り上げを増進させるため、
①~、
②~、という施策を助言する。
※①と②の部分で具体的な事柄を述べるときは、因果関係に注意して書くようにする。
→「~により、~である」「~のため、~である」という表現を使う。
次に制約条件を考える!
制約条件:
・地元市場の不振→地元はダメ、新しい市場を考える必要がある
・大都市圏事業の縮小→大都市圏での成長は期待できない、立地条件を武器にできない
・急速な業績回復が期待できない中で、短期の売り上げを増進させる
→即効性のある施策が必要、外部環境悪化により内部資源の強化が必要
・中小企業診断士として→一次知識、白書の知識、客観性と論理性、多面的な視点
A社の強みである「インターネットを活用した通信販売」の強化を行う方向性か?
理由①:立地条件に関係なく、全国の市場に商品を販売できるため。
理由②:現在、すでに通信販売を行っており短期に販売体制が強化できるため。
与件を活用する!
「社内コンテストの開催、社外の菓子職人やコンサルタントへの依頼などによって新しい創作菓子の開発に積極的に取り組んだ」
→社内の能力開発、社外リソースの活用による能力開発は可能:能力開発の視点
「大都市圏市場の拡大を目指すA社社長は、高級スーパーへの納品にも挑戦した」
→高級化による売り上げの確保
「販売体制の整備などで新たな対応が求められた」
→販売体制の整備が必要
「死に筋商品の排除と売れ筋商品への絞り込み」→この表現は覚えておく!
→基本的な商品の絞り込みは対策済み、これ以外で売上高向上策を探す
「大都市圏のデパート・スーパーに当初から投入していた商品の売り上げに支えられ、かろうじて営業を続けている」
→新たな売り上げをつくる商品の投入が必要
短期的に売り上げを増進させる:
組織・人事の視点→販売員の能力開発
マーケティングの視点→売上=客数×客単価、顧客生涯価値・リピーター率の向上
以上をまとめると…
→①社外のコンサルタントによる社内研修や社内コンテストを活用した能力開発により販売員のスキルを向上させて販売体制を整備する。
→②高級スーパー向けの商品と新奇な商品を定期的に打ち出すことにより客単価とリピーター率を向上させてインターネットの通信販売を強化する。
問題の階層を考える!
短期的に売り上げを増進させる→商品を販売するのは人→人事戦略レベル
人事戦略は、モラール向上と能力開発の視点で考える。
モラール向上策は第3問で解答済み→今回は能力開発の視点で。
能力開発→計画的・継続的な視点で行う。
OJT(仕事を通じての技能継承)
Off-JT(社外研修)
自己啓発(奨励金、社内表彰制度と絡める)
以上から導き出した解答:
題意:例2を使用
組織・人事(能力開発)とマーケティングの視点
能力開発の切り口はOJT、Off-JT、自己啓発
短期的に売り上げを増進させるため、①社外のコンサルタントによる社内研修や社内コンテストを活用した能力開発により販売員のスキルを向上させて販売体制を整備し、②高級スーパー向けの商品と新奇な商品を定期的に打ち出すことにより客単価とリピーター率を向上させてインターネットの通信販売を強化することを助言する。150字
やっと、組織・人事事例が終わった。与件全文を見て欲しい。色のついた部分が解答で参考にした部分だ。全体に渡ってほぼ均等に色が付いていると思う。与件の文章に無駄な部分はないのである。もし、解答する上で参考にしていない部分がある場合は、解答の方向性が間違っている可能性があるので注意すべきだ。
解答する上で最も重要な事は、設問の題意にしたがって素直に解くことである。なるべく、設問や与件に書かれている言葉通りに引用して解答をつくり、「A社社長」に対して診断結果を報告するのだ。
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