Y-Phrases更新!
平成21年度の解答を終了したので、一連の記事を整理しました。
サイドバーのMenuに診断士リンクを張って、各記事へのアクセスを改善しました。
2010年6月19日土曜日
2010年6月17日木曜日
平成21年度 財務 問題
与件全文
D社は、資本金1億円、総資産約50億円、売上高約56億円、従業員80人の企業で、ファッション性の高いスポーツウエアの製造及び販売を行っている。本社を中核都市の駅前に構えており、生産はその郊外にある自社工場で行っている。D社は高い縫製加工技術による自社製品に定評を有しており、その技術力から国内大手のY社より有名ブランド品のOEM生産を受託している。主力製品はY社向けの有名ブランドスポーツウエアで、日本製の高品質・高機能が消費者に支持されており、海外での生産は行っていない。他方で自社ブランドを立ち上げ、最近では米国等への海外輸出も手がけている。
D社の取締役会では、各国の経済状況に伴う売上高の変動リスクが経営の課題として繰り返し議論されている。D社の主力製品は発注元のY社で販売されるが、先進国だけでなくアジア諸国でも順調に売上高を伸ばしている。しかし、スポーツウエアの売上高はもともと景気変動の影響を受けやすいため、特に成長市場であるアジア諸国での売上高変動は経営者にとっての関心事である。近年の経済のグローバル化に伴う影響がD社にとっての経営上の大きなリスクとなっている。
D社の本社は創業当時より現所在地にあるが、事業の拡大に伴って手狭になったため隣地の中古不動産を買い増ししてきた。本社社屋の減価償却後の簿価は7億円である。本社社屋の一部は老朽化しており、建て替えも検討しなければならない時期を迎えている。一方で駅前の再開発事業も進んでおり、本社付近も一体開発される可能性がある。
D社では、本社(土地及び建物)を平成21年度期首に売却してオフィスを賃借すると同時に、本社の管理業務の一部をアウトソーシングすることを検討している。本社を売却した場合、18億円の手取りのキャッシュフローが得られるので、これを全額負債の返済に充当する。オフィスの賃借料は年4,500万円であると推定される。また、本社の管理業務の一部を年間委託費6,000万円(固定費)でアウトソーシングすることによって、従来発生していた販売費及び一般管理費(減価償却費を含む)のうち3億円を削減することが可能である。
平成20年度のD社の財務諸表及び同業他社の財務諸表は次のとおりである。
(単位:百万円、数字は「D社/同業他社」)
貸借対照表
資産の部
流動資産 2,659/2,645
現金・預金 631/510
受取手形・売掛金 961/969
有価証券 153/142
棚卸資産 789/836
その他流動資産 125/188
固定資産 2,353/1,640
土地 1,034/567
建物・機械装置 1,086/539
その他有形固定資産 21/6
投資有価証券 212/528
資産合計 5,012/4,285
負債の部
流動負債 1,938/1,834
支払手形・買掛金 924/839
短期借入金 663/785
その他流動負債 351/210
固定負債 1,793/1,189
長期借入金 1,626/1,103
その他固定負債 167/86
負債合計 3,731/3,023
純資産の部
資本金 100/72
利益準備金 25/18
別途積立金 1,075/1,112
繰越利益剰余金 81/60
純資産合計 1,281/1,262
負債・純資産合計 5,012/4,285
減価償却費 365/350
損益計算書
売上高 5,611/5,039
売上原価 4,204/3,985
売上総利益 1,407/1,054
販売費・一般管理費 931/853
営業利益 476/201
営業外収益 3/12
営業外費用 208/122
経常利益 271/91
特別利益 0/39
特別損失 0/41
税引前当期純利益 271/89
法人税等 108/36
当期純利益 163/53
従業員数 80/75
第1問(配点40点)
D社の平成20年度の財務諸表を用いて経営分析を行い、この企業の財務上の長所・短所のうち重要と思われるものを3つ取り上げ、その各々について、長所・短所の根拠を最も的確に示す経営指標を1つだけあげて、その名称を(a)欄に示し、経営指標値を計算(小数第3位を四捨五入すること)して(b)欄に示した上で、その長所・短所が生じた原因をD社のこれまでの経営状況に照らして(c)欄に60字以内で説明せよ。
第2問(配点20点)
近年の経済のグローバル化に伴って経営環境は不確実性を増している。D社の平成20年度の期首の投下総資本は4,907百万円であり、それに対する平成20年度の総資本営業利益率は9.7%であった。平成21年度の総資本営業利益率は前年並みになるか、もしくは景気が減速すれば-2.5%になると予想され、それぞれの状況が生起する確率は1/2と想定される。負債の平均資本コスト(負債総額に占める利息の割合)を4.9%とし、支払利息以外の営業外損益および特別損益はゼロと仮定して、次の設問に答えよ。
(設問1)
本社(土地及び建物)を売却しない場合、平成21年度の税引前自己資本利益率の期待値を求めよ(計算結果は%で解答し、小数第3位を四捨五入すること)。
(設問2)
本社(土地及び建物)を売却した場合、18億円のキャッシュフローが得られる。これを全額負債の返済に充当することを検討している。この場合、景気変動による税引前自己資本利益率のバラツキがどのように変化するかを100字以内で説明せよ。
第3問(配点20点)
D社では、売上高と利益の関係を把握するため、経常利益ベースでの損益分岐点分析によるシミューションを開始した。平成20年度の売上原価に占める固定費は1,598百万円である。推計によると、平成21年度に景気が減速した場合、20%程度の売上高減少が見込まれることがわかった。
また、本社(土地及び建物)を売却しない場合の平成21年度の固定費および営業外損益は平成20年度と同額とする。
なお、金利を8%とし、販売費及び一般管理費、営業外損益はすべて固定費とする。
(設問1)
D社の平成20年度の損益分岐点売上高を求め、(a)欄に記入せよ。
また、本社を売却しない場合について、平成21年度の売上高が平成20年度より20%減少したときに予想される経常利益を求め、(b)欄に記入せよ。
なお、計算結果は百万円単位で解答し、百万円未満を四捨五入すること。
(設問2)
本社を売却した場合の平成21年度の損益分岐点売上高を求め、(a)欄に記入せよ(計算結果は百万円単位で解答し、百万円未満を四捨五入すること)。
また、この結果、営業レバレッジがどのように変化し、その変化がD社の業績にどのような影響を与えるかを、財務・会計の観点から100字以内で(b)欄に説明せよ。
第4問(配点20点)
D社は、Y社への売り上げは円建てで支払いを受けているが、海外に輸出する自社製品の支払いは上期末と下期末の2回に分けて米ドルで受け取っている。この為替リスクをヘッジするため、D社は、通常、各半期の期首に予想売上高分の為替予約を行っている。平成21年度上期分は1ドル100円で500万ドルの為替予約(ドルの売り建て)を行った。
(設問1)
平成21年度の上期の売上高は、予想を下回り430万ドルであった。上期末の為替のスポットレートは102円であった。この場合の為替による損益を求めよ(単位:万円)。
(設問2)
D社では、オプションを用いて為替リスクをヘッジすることも検討している。1ドル100円で決済するためには、どのようなオプションを用いるべきか、50字以内で(a)欄に説明せよ。
また、オプションを用いた場合の長所と短所を100字以内で(b)欄に説明せよ。
D社は、資本金1億円、総資産約50億円、売上高約56億円、従業員80人の企業で、ファッション性の高いスポーツウエアの製造及び販売を行っている。本社を中核都市の駅前に構えており、生産はその郊外にある自社工場で行っている。D社は高い縫製加工技術による自社製品に定評を有しており、その技術力から国内大手のY社より有名ブランド品のOEM生産を受託している。主力製品はY社向けの有名ブランドスポーツウエアで、日本製の高品質・高機能が消費者に支持されており、海外での生産は行っていない。他方で自社ブランドを立ち上げ、最近では米国等への海外輸出も手がけている。
D社の取締役会では、各国の経済状況に伴う売上高の変動リスクが経営の課題として繰り返し議論されている。D社の主力製品は発注元のY社で販売されるが、先進国だけでなくアジア諸国でも順調に売上高を伸ばしている。しかし、スポーツウエアの売上高はもともと景気変動の影響を受けやすいため、特に成長市場であるアジア諸国での売上高変動は経営者にとっての関心事である。近年の経済のグローバル化に伴う影響がD社にとっての経営上の大きなリスクとなっている。
D社の本社は創業当時より現所在地にあるが、事業の拡大に伴って手狭になったため隣地の中古不動産を買い増ししてきた。本社社屋の減価償却後の簿価は7億円である。本社社屋の一部は老朽化しており、建て替えも検討しなければならない時期を迎えている。一方で駅前の再開発事業も進んでおり、本社付近も一体開発される可能性がある。
D社では、本社(土地及び建物)を平成21年度期首に売却してオフィスを賃借すると同時に、本社の管理業務の一部をアウトソーシングすることを検討している。本社を売却した場合、18億円の手取りのキャッシュフローが得られるので、これを全額負債の返済に充当する。オフィスの賃借料は年4,500万円であると推定される。また、本社の管理業務の一部を年間委託費6,000万円(固定費)でアウトソーシングすることによって、従来発生していた販売費及び一般管理費(減価償却費を含む)のうち3億円を削減することが可能である。
平成20年度のD社の財務諸表及び同業他社の財務諸表は次のとおりである。
(単位:百万円、数字は「D社/同業他社」)
貸借対照表
資産の部
流動資産 2,659/2,645
現金・預金 631/510
受取手形・売掛金 961/969
有価証券 153/142
棚卸資産 789/836
その他流動資産 125/188
固定資産 2,353/1,640
土地 1,034/567
建物・機械装置 1,086/539
その他有形固定資産 21/6
投資有価証券 212/528
資産合計 5,012/4,285
負債の部
流動負債 1,938/1,834
支払手形・買掛金 924/839
短期借入金 663/785
その他流動負債 351/210
固定負債 1,793/1,189
長期借入金 1,626/1,103
その他固定負債 167/86
負債合計 3,731/3,023
純資産の部
資本金 100/72
利益準備金 25/18
別途積立金 1,075/1,112
繰越利益剰余金 81/60
純資産合計 1,281/1,262
負債・純資産合計 5,012/4,285
減価償却費 365/350
損益計算書
売上高 5,611/5,039
売上原価 4,204/3,985
売上総利益 1,407/1,054
販売費・一般管理費 931/853
営業利益 476/201
営業外収益 3/12
営業外費用 208/122
経常利益 271/91
特別利益 0/39
特別損失 0/41
税引前当期純利益 271/89
法人税等 108/36
当期純利益 163/53
従業員数 80/75
第1問(配点40点)
D社の平成20年度の財務諸表を用いて経営分析を行い、この企業の財務上の長所・短所のうち重要と思われるものを3つ取り上げ、その各々について、長所・短所の根拠を最も的確に示す経営指標を1つだけあげて、その名称を(a)欄に示し、経営指標値を計算(小数第3位を四捨五入すること)して(b)欄に示した上で、その長所・短所が生じた原因をD社のこれまでの経営状況に照らして(c)欄に60字以内で説明せよ。
第2問(配点20点)
近年の経済のグローバル化に伴って経営環境は不確実性を増している。D社の平成20年度の期首の投下総資本は4,907百万円であり、それに対する平成20年度の総資本営業利益率は9.7%であった。平成21年度の総資本営業利益率は前年並みになるか、もしくは景気が減速すれば-2.5%になると予想され、それぞれの状況が生起する確率は1/2と想定される。負債の平均資本コスト(負債総額に占める利息の割合)を4.9%とし、支払利息以外の営業外損益および特別損益はゼロと仮定して、次の設問に答えよ。
(設問1)
本社(土地及び建物)を売却しない場合、平成21年度の税引前自己資本利益率の期待値を求めよ(計算結果は%で解答し、小数第3位を四捨五入すること)。
(設問2)
本社(土地及び建物)を売却した場合、18億円のキャッシュフローが得られる。これを全額負債の返済に充当することを検討している。この場合、景気変動による税引前自己資本利益率のバラツキがどのように変化するかを100字以内で説明せよ。
第3問(配点20点)
D社では、売上高と利益の関係を把握するため、経常利益ベースでの損益分岐点分析によるシミューションを開始した。平成20年度の売上原価に占める固定費は1,598百万円である。推計によると、平成21年度に景気が減速した場合、20%程度の売上高減少が見込まれることがわかった。
また、本社(土地及び建物)を売却しない場合の平成21年度の固定費および営業外損益は平成20年度と同額とする。
なお、金利を8%とし、販売費及び一般管理費、営業外損益はすべて固定費とする。
(設問1)
D社の平成20年度の損益分岐点売上高を求め、(a)欄に記入せよ。
また、本社を売却しない場合について、平成21年度の売上高が平成20年度より20%減少したときに予想される経常利益を求め、(b)欄に記入せよ。
なお、計算結果は百万円単位で解答し、百万円未満を四捨五入すること。
(設問2)
本社を売却した場合の平成21年度の損益分岐点売上高を求め、(a)欄に記入せよ(計算結果は百万円単位で解答し、百万円未満を四捨五入すること)。
また、この結果、営業レバレッジがどのように変化し、その変化がD社の業績にどのような影響を与えるかを、財務・会計の観点から100字以内で(b)欄に説明せよ。
第4問(配点20点)
D社は、Y社への売り上げは円建てで支払いを受けているが、海外に輸出する自社製品の支払いは上期末と下期末の2回に分けて米ドルで受け取っている。この為替リスクをヘッジするため、D社は、通常、各半期の期首に予想売上高分の為替予約を行っている。平成21年度上期分は1ドル100円で500万ドルの為替予約(ドルの売り建て)を行った。
(設問1)
平成21年度の上期の売上高は、予想を下回り430万ドルであった。上期末の為替のスポットレートは102円であった。この場合の為替による損益を求めよ(単位:万円)。
(設問2)
D社では、オプションを用いて為替リスクをヘッジすることも検討している。1ドル100円で決済するためには、どのようなオプションを用いるべきか、50字以内で(a)欄に説明せよ。
また、オプションを用いた場合の長所と短所を100字以内で(b)欄に説明せよ。
平成21年度 生産・技術 問題
与件全文
【C社の概要】
1980年創業のC社は、ダイニング用テーブル、チェア、スツールなどを主力にする木製家具製造業である。資本金は5,000万円、従業員は総務・経理部門6名、営業部門12名、製品開発・設計部門18名、製造部門84名の合計120名である。なお、営業部門は販売業務のほか、製品在庫管理、製品出荷業務を担当している。 木製家具製造業は、一般に生産地または消費地の家具問屋を経由して小売店に販売している。その中で、家具専門の中小小売店では総じて売り上げが低迷しているが、消費者に対してライフスタイルの提案を積極的に展開しているインテリア用品・生活用品を扱う小売店や、製造小売型(SPA)の大型小売店の売り上げは比較的好調である。このような木製家具業界にあって、C社は全国の小売店約300社に直接販売している。その販売先の約80%は、主にインテリア用品・生活用品を取り扱う小売店が占め、家具専門の小売店数が少ないのが特徴である。販売先の小売店では、C社製晶の一部を展示し、その他の製品はカタログによって販売活動を行っている例が多い。販売実績が大きな有力販売先では、C社製品を中心に生活空間を演出する展示スペースを設けている。現在、この有力販売先の一つである大手インテリア用品小売チェーンから、OEM製品の取引打診があり、先方から製品アイデアの提供を受けて製品化を進めようとしている。 C社製品は、塗料や接着材に有害物質が含まれていないものを使用し、消費者の健康、安全志向にマッチした製品である。ダイニング用テーブル、チェアのセットの平均販売価格は15万円前後と比較的高額であるが、幼い子供を持つ若い主婦層に受け入れられている。近年の低迷する木製家具業界にあって、C社の収益には大きな増加は見られないものの、年商は約18億円前後で推移している。現在進めようとしている大手インテリア用品小売チェーンからのOEM製品受注が現実のものになると、年間で約1割程度の売り上げ増が見込まれている。
【新製品開発と製品アイテム】
C社の新製品開発のコンセプトは「20~30歳代の主婦に喜ばれる家具」である。新製品開発情報は、各営業担当者がそれぞれ担当する販売先の小売店から消費者の嗜好、要望などを情報として入手し、製品開発・設計部門に提案している。このような新製品に関する多くの提案によって、積極的な新製品開発を進めており、その結果、現在の自社ブランド製品は使用する木材の品種違い、塗装の色違いを含めて170アイテムと多くなっている。製品はカタログに掲載され、販売先や消費者に配布されているが、その中には出荷頻度および出荷数量が極端に少ない製品も見られる。
【生産の現状】
小売店からの注文に対しては、その当日に製品を出荷することを取引の基本としている。そのため、製品は見込生産であり、製品ごとにロット生産している。C社の生産工程は、部品切断加工⇒部品機械加工⇒部品仕上げ加工⇒組立て⇒塗装・仕上げ⇒梱包の6工程である。そのうち、部品機械加工の一部と販売数量の少ない製品によっては完成品までを外注工場に依存している。 毎月中旬に開かれる営業部門との製販会議で翌月の販売予測数量が提示され、生産計画では、それを参考に翌月の生産品目、生産順が決められている。生産計画作成後は、営業部門との定期的な情報交換は行われていない。 生産工程上のボトルネック工程は部品機械加工工程である。この工程における段取り作業回数を減らし稼働率を上げるために、生産ロットサイズは部品機械加工工程の1日で加工可能な数量にて決定されており、現在は約100~150個である。この生産ロットサイズは営業部門の月販売予測数をどの製品も上回っている。その結果、製品在庫は全体で月平均出荷量の2倍以上常に存在し、少しずつ増加している。しかし、 製品によっては欠品が発生し、販売先に即納できないこともしばしば生じている。毎月後半になると、営業部門から欠品している製品の追加生産依頼があり、生産が不安定になる。製造部門の責任者は生産計画の変更、それに伴う原材料の確保、各工程能力の調整、外注工場への生産依頼など、その日その日の調整作業に追われている。 日々の作業指示は第1工程の部品切断加工着手日を計画して指示するが、その後の工程の作業指示は特になく、現場対応で進められている。生産着手から生産完了までのリードタイムは、最短のもので半月、最長のものでは1カ月半となっている。このため、注文の際に製品在庫が不足している場合には、納品までに1カ月以上顧客を待たせる事態も時には生じているが、幸いにも欠品により注文がキャンセルされる確率は低い。 このような生産工程の状況下で、製造部門は、経営上問題となっている過大な製品在庫の削減、および製品の欠品問題の改善を経営者より指示され、対策に苦慮している。また、現在進めようとしている大手インテリア用品小売チェーンのOEM製品では、従来の見込生産とは違い、受注生産で一括納品する方向であり、受注後の納期の回答が求められる。
第1問(配点10点)
低迷する木製家具業界にあって、C社は安定的な業績を維持している。その考えられる理由を120字以内で述べよ。
第2問(配点40点)
C社では、経営上大きな問題となっている過大な製品在庫および製品の欠品について改善を検討している。次の設問に答えよ。
(設問1)
過大な製品在庫と製品の欠品が生じている理由を100字以内で述べよ。
(設問2)
製品の在庫問題を解決するために、生産面で必要な対策を120字以内で述べよ。
第3問(配点40点)
C社では、大手インテリア用品小売チェーンからOEM製品の取引要請があり、共同で製品化を進めようとしている。
(設問1)
大手インテリア用品小売チェーンとのOEM製品取引は、C社にとってどのようなメリットがあるのかについて80字以内で述べよ。
(設問2)
C社のOEM事業推進において考えられる課題とその対応策について120字以内で述べよ。
第4問(配点10点)
C社の自社製品は見込生産であり、現在製品化を進めようとしているOEM製品は受注生産で対応する予定である。C社の見込生産と受注生産の違いを、重視すべき情報と管理ポイントの視点から80字以内で述べよ。
【C社の概要】
1980年創業のC社は、ダイニング用テーブル、チェア、スツールなどを主力にする木製家具製造業である。資本金は5,000万円、従業員は総務・経理部門6名、営業部門12名、製品開発・設計部門18名、製造部門84名の合計120名である。なお、営業部門は販売業務のほか、製品在庫管理、製品出荷業務を担当している。 木製家具製造業は、一般に生産地または消費地の家具問屋を経由して小売店に販売している。その中で、家具専門の中小小売店では総じて売り上げが低迷しているが、消費者に対してライフスタイルの提案を積極的に展開しているインテリア用品・生活用品を扱う小売店や、製造小売型(SPA)の大型小売店の売り上げは比較的好調である。このような木製家具業界にあって、C社は全国の小売店約300社に直接販売している。その販売先の約80%は、主にインテリア用品・生活用品を取り扱う小売店が占め、家具専門の小売店数が少ないのが特徴である。販売先の小売店では、C社製晶の一部を展示し、その他の製品はカタログによって販売活動を行っている例が多い。販売実績が大きな有力販売先では、C社製品を中心に生活空間を演出する展示スペースを設けている。現在、この有力販売先の一つである大手インテリア用品小売チェーンから、OEM製品の取引打診があり、先方から製品アイデアの提供を受けて製品化を進めようとしている。 C社製品は、塗料や接着材に有害物質が含まれていないものを使用し、消費者の健康、安全志向にマッチした製品である。ダイニング用テーブル、チェアのセットの平均販売価格は15万円前後と比較的高額であるが、幼い子供を持つ若い主婦層に受け入れられている。近年の低迷する木製家具業界にあって、C社の収益には大きな増加は見られないものの、年商は約18億円前後で推移している。現在進めようとしている大手インテリア用品小売チェーンからのOEM製品受注が現実のものになると、年間で約1割程度の売り上げ増が見込まれている。
【新製品開発と製品アイテム】
C社の新製品開発のコンセプトは「20~30歳代の主婦に喜ばれる家具」である。新製品開発情報は、各営業担当者がそれぞれ担当する販売先の小売店から消費者の嗜好、要望などを情報として入手し、製品開発・設計部門に提案している。このような新製品に関する多くの提案によって、積極的な新製品開発を進めており、その結果、現在の自社ブランド製品は使用する木材の品種違い、塗装の色違いを含めて170アイテムと多くなっている。製品はカタログに掲載され、販売先や消費者に配布されているが、その中には出荷頻度および出荷数量が極端に少ない製品も見られる。
【生産の現状】
小売店からの注文に対しては、その当日に製品を出荷することを取引の基本としている。そのため、製品は見込生産であり、製品ごとにロット生産している。C社の生産工程は、部品切断加工⇒部品機械加工⇒部品仕上げ加工⇒組立て⇒塗装・仕上げ⇒梱包の6工程である。そのうち、部品機械加工の一部と販売数量の少ない製品によっては完成品までを外注工場に依存している。 毎月中旬に開かれる営業部門との製販会議で翌月の販売予測数量が提示され、生産計画では、それを参考に翌月の生産品目、生産順が決められている。生産計画作成後は、営業部門との定期的な情報交換は行われていない。 生産工程上のボトルネック工程は部品機械加工工程である。この工程における段取り作業回数を減らし稼働率を上げるために、生産ロットサイズは部品機械加工工程の1日で加工可能な数量にて決定されており、現在は約100~150個である。この生産ロットサイズは営業部門の月販売予測数をどの製品も上回っている。その結果、製品在庫は全体で月平均出荷量の2倍以上常に存在し、少しずつ増加している。しかし、 製品によっては欠品が発生し、販売先に即納できないこともしばしば生じている。毎月後半になると、営業部門から欠品している製品の追加生産依頼があり、生産が不安定になる。製造部門の責任者は生産計画の変更、それに伴う原材料の確保、各工程能力の調整、外注工場への生産依頼など、その日その日の調整作業に追われている。 日々の作業指示は第1工程の部品切断加工着手日を計画して指示するが、その後の工程の作業指示は特になく、現場対応で進められている。生産着手から生産完了までのリードタイムは、最短のもので半月、最長のものでは1カ月半となっている。このため、注文の際に製品在庫が不足している場合には、納品までに1カ月以上顧客を待たせる事態も時には生じているが、幸いにも欠品により注文がキャンセルされる確率は低い。 このような生産工程の状況下で、製造部門は、経営上問題となっている過大な製品在庫の削減、および製品の欠品問題の改善を経営者より指示され、対策に苦慮している。また、現在進めようとしている大手インテリア用品小売チェーンのOEM製品では、従来の見込生産とは違い、受注生産で一括納品する方向であり、受注後の納期の回答が求められる。
第1問(配点10点)
低迷する木製家具業界にあって、C社は安定的な業績を維持している。その考えられる理由を120字以内で述べよ。
第2問(配点40点)
C社では、経営上大きな問題となっている過大な製品在庫および製品の欠品について改善を検討している。次の設問に答えよ。
(設問1)
過大な製品在庫と製品の欠品が生じている理由を100字以内で述べよ。
(設問2)
製品の在庫問題を解決するために、生産面で必要な対策を120字以内で述べよ。
第3問(配点40点)
C社では、大手インテリア用品小売チェーンからOEM製品の取引要請があり、共同で製品化を進めようとしている。
(設問1)
大手インテリア用品小売チェーンとのOEM製品取引は、C社にとってどのようなメリットがあるのかについて80字以内で述べよ。
(設問2)
C社のOEM事業推進において考えられる課題とその対応策について120字以内で述べよ。
第4問(配点10点)
C社の自社製品は見込生産であり、現在製品化を進めようとしているOEM製品は受注生産で対応する予定である。C社の見込生産と受注生産の違いを、重視すべき情報と管理ポイントの視点から80字以内で述べよ。
平成21年度 マーケティング・流通 問題
与件全文
B社は、X市の中心部にあるX銀座商店街の一角に本店店舗を構えるスポーツ用品店である。資本金3,000万円、従業員数20名、年商5億円で、隣接する市に2店舗支店を持つ。本店を含めいずれの店舗においても、地域の学校や団体との関係を深め、緻密な商品供給とサービスに力を入れてきた。また、従業員の顧客対応に関しても住民からの評判が良かった。なおB社は、本店裏にかつて倉庫と駐車場であった土地を保有しており、その再利用を考えている。
X市は大都市近郊にあり、人口30万人を抱え、古くから城下町として栄えてきた歴史と文化や伝統を持つ商業都市である。市の中心に位置する城跡公園は市民に親しまれているだけではなく、史跡や街中の寺院を訪れる観光客の数も多い。この公園を中心に市庁舎や企業のオフィス街があり、X銀座商店街も伝統と近代化の流れの中で時を刻んでいる。100年ほど前の大火事の経験から、耐火建築の蔵造りが注目され、今日の「蔵造りの町並み」が築かれている。公園から商店街を通って徒歩10分ほどのところにX駅があり、都心部と鉄道で直結している。駅には専門店やレストランとホテルが入った駅ビルが隣接している。B社にとって幸いだったのは、駅ビルの中にはスポーツ用品店はなかったことである。
X市内には、小・中学校と高校の他に、中心部を外れた所に複数の大学のキャンパスもあり、X市は昔から教育水準が高いとされている。B社は、長年にわたって、市内の学校の体操着やクラブ活動のユニフォーム、大学のサークルのユニフォームなどの注文を一手に受けてきた。また、B社本店には、市内の草野球リーグやママさんバレーボールリーグの事務局が置かれ、試合会場の手配などをB社はボランティアで引き受けている。その関係でユニフォームや用品の受注も安定している。B社が毎月発行するミニコミ誌やホームページには、地元スポーツの試合結果が掲載されている。最近では、大学生を中心にフットサル(問題文の末尾参照)の人気が高まり、市内でリーグ戦ができるほどにチーム数も増えている。それに伴いフットサル用品の需要も増えてきている。
数年前、X市の郊外に大型小売業がディベロッパーとなるショッピングセンター(以下「SC」という.)が出店した。この影響で、X銀座商店街全体の売り上げも少しずつ減少し始めた。SC内の競合店に客を奪われた店舗の中には、後継者問題も絡んで閉店を考えようとするものも出てきた。SC内には2つのスポーツ用品店があり、1つは大手チェーンのスポーツ用品店で、もう1つはファッション重視のスポーツ用品店である。大手チェーンのスポーツ用品店は、各種スポーツのプロ志向の需要にも応えようとする品揃えをしている。また、もう1つのスポーツ用品店は、若者向けスポーツカジュアルのファッションに重点を置いた品揃えを行っている。
最近、X市の中心部では、出社前や昼休み、そして早朝や夕方に公園周辺をウォーキングやジョギングする人が増えている。週末や休日になると、さらにその人数は増加しており、高齢者の割合が増えてきている。
このようなランナー達のグループ作りが盛んになっており、企業や大学のサークルだけではなく、お互い面識も無いのに1人で走っているうちに顔見知りとなり、グループを作って一緒に走る者も増えている。
ランナー達の悩みは、着替えとシャワーであるが、商店街の裏通りにある銭湯がランナー達のニーズに応えている。また、夕方になると銭湯が社交場となって、グループ同士で近隣の居酒屋へ出掛けていく者たちも多い。しかし、この銭湯は昔から人気があり、高齢者を中心に数多くの人々が利用してきた。ランナー達がこの銭湯を利用することが増えるにつれ、銭湯が非常に混み合ってきている。そこで、この銭湯は何か事業ができないか模索している。
そのような状況の中で、X市は伝統に配慮した道路整備を行い、城下町であるが故に見通しの悪い入り組んだ道路をできるだけ広くするために、電線の地中化を進めている。また、商工会議所を中心に「街おこし」としての企画を考えていた。そしてその1つとして、全国各地で定着しつつある「市民マラソン」を計画している。「健康」と「観光」を融合させ、「歴史と文化を走りぬけよう」というテーマで、城跡公園がスタートとゴールになり、5kn 、10km、ハーフマラソンの距離別で、初心者、親子から本格的ランナーまでが楽しめる大会を目指している。特に、5kmでは高齢者の参加希望者が多い。X銀座商店街も、もちろんそのコースの中に入っている。電線の地中化により広くなった蔵造りの町並みの中を、市民と全国から参加するランナーたちが歴史と文化の香りの中を、颯爽と駆け抜ける光景は、毎年秋に行われる祭りと同様の活気を見せるであろう。
さて、少子高齢化の波はX市内の学校の生徒数の減少にも表れてきている。都心部から交通のアクセスが良いことで、マンション建設も増えてはいるが、その影響による生徒数の増加は一時的なもので、長期的に見れば安定的なものとはいえない。また、高齢者の割合も増え、草野球人口も少しずつ減少してきた。B社の売り上げは徐々にではあるが低下してきている。
【フットサル】
「フットサル(futsal)」は、基本的に室内で行われる5人制のミニサッカーのようなもので、ピッチ(コートのこと)の広さはサッカーの約1/7〜1/8である。また、スライディングタックルなどの接触プレーは禁止されているので、ジュニアから中高年、女性まで気軽に参加できるスポーツとして人気が出てきている。
第1問(配点20点)
ショッピングセンター内の2つの競合店に対してB社の強みを活かした差別化戦略は、具体的にどのようなものか。80字以内で2つ答えよ。
第2問(配点10点)
B社が需要拡大のために、これからターゲットとすべき顧客層とはどのようなものか。30字以内で2つ答えよ。
第3問(配点40点)
B社は顧客の拡大と自社へのロイヤルティ(愛顧)を高めるために、新しい事業を考えている。どのような事業が考えられるか。
(設問1)
B社は自社だけで行えるサービス事業を考えている。それはどのようなものか、120字以内で答えよ。
(設問2)
B社は商店街の裏通りにある銭湯との共同事業を考えている。どのようなサービス事業が考えられるか、120字以内で答えよ。
第4問(配点30点)
B社はインターネットを使って、自社のPRだけではなく、地域内外の人々と何らかのコミュニケーションを図ろうとしている。それはどのようなものが考えられるか、150字以内で答えよ。
B社は、X市の中心部にあるX銀座商店街の一角に本店店舗を構えるスポーツ用品店である。資本金3,000万円、従業員数20名、年商5億円で、隣接する市に2店舗支店を持つ。本店を含めいずれの店舗においても、地域の学校や団体との関係を深め、緻密な商品供給とサービスに力を入れてきた。また、従業員の顧客対応に関しても住民からの評判が良かった。なおB社は、本店裏にかつて倉庫と駐車場であった土地を保有しており、その再利用を考えている。
X市は大都市近郊にあり、人口30万人を抱え、古くから城下町として栄えてきた歴史と文化や伝統を持つ商業都市である。市の中心に位置する城跡公園は市民に親しまれているだけではなく、史跡や街中の寺院を訪れる観光客の数も多い。この公園を中心に市庁舎や企業のオフィス街があり、X銀座商店街も伝統と近代化の流れの中で時を刻んでいる。100年ほど前の大火事の経験から、耐火建築の蔵造りが注目され、今日の「蔵造りの町並み」が築かれている。公園から商店街を通って徒歩10分ほどのところにX駅があり、都心部と鉄道で直結している。駅には専門店やレストランとホテルが入った駅ビルが隣接している。B社にとって幸いだったのは、駅ビルの中にはスポーツ用品店はなかったことである。
X市内には、小・中学校と高校の他に、中心部を外れた所に複数の大学のキャンパスもあり、X市は昔から教育水準が高いとされている。B社は、長年にわたって、市内の学校の体操着やクラブ活動のユニフォーム、大学のサークルのユニフォームなどの注文を一手に受けてきた。また、B社本店には、市内の草野球リーグやママさんバレーボールリーグの事務局が置かれ、試合会場の手配などをB社はボランティアで引き受けている。その関係でユニフォームや用品の受注も安定している。B社が毎月発行するミニコミ誌やホームページには、地元スポーツの試合結果が掲載されている。最近では、大学生を中心にフットサル(問題文の末尾参照)の人気が高まり、市内でリーグ戦ができるほどにチーム数も増えている。それに伴いフットサル用品の需要も増えてきている。
数年前、X市の郊外に大型小売業がディベロッパーとなるショッピングセンター(以下「SC」という.)が出店した。この影響で、X銀座商店街全体の売り上げも少しずつ減少し始めた。SC内の競合店に客を奪われた店舗の中には、後継者問題も絡んで閉店を考えようとするものも出てきた。SC内には2つのスポーツ用品店があり、1つは大手チェーンのスポーツ用品店で、もう1つはファッション重視のスポーツ用品店である。大手チェーンのスポーツ用品店は、各種スポーツのプロ志向の需要にも応えようとする品揃えをしている。また、もう1つのスポーツ用品店は、若者向けスポーツカジュアルのファッションに重点を置いた品揃えを行っている。
最近、X市の中心部では、出社前や昼休み、そして早朝や夕方に公園周辺をウォーキングやジョギングする人が増えている。週末や休日になると、さらにその人数は増加しており、高齢者の割合が増えてきている。
このようなランナー達のグループ作りが盛んになっており、企業や大学のサークルだけではなく、お互い面識も無いのに1人で走っているうちに顔見知りとなり、グループを作って一緒に走る者も増えている。
ランナー達の悩みは、着替えとシャワーであるが、商店街の裏通りにある銭湯がランナー達のニーズに応えている。また、夕方になると銭湯が社交場となって、グループ同士で近隣の居酒屋へ出掛けていく者たちも多い。しかし、この銭湯は昔から人気があり、高齢者を中心に数多くの人々が利用してきた。ランナー達がこの銭湯を利用することが増えるにつれ、銭湯が非常に混み合ってきている。そこで、この銭湯は何か事業ができないか模索している。
そのような状況の中で、X市は伝統に配慮した道路整備を行い、城下町であるが故に見通しの悪い入り組んだ道路をできるだけ広くするために、電線の地中化を進めている。また、商工会議所を中心に「街おこし」としての企画を考えていた。そしてその1つとして、全国各地で定着しつつある「市民マラソン」を計画している。「健康」と「観光」を融合させ、「歴史と文化を走りぬけよう」というテーマで、城跡公園がスタートとゴールになり、5kn 、10km、ハーフマラソンの距離別で、初心者、親子から本格的ランナーまでが楽しめる大会を目指している。特に、5kmでは高齢者の参加希望者が多い。X銀座商店街も、もちろんそのコースの中に入っている。電線の地中化により広くなった蔵造りの町並みの中を、市民と全国から参加するランナーたちが歴史と文化の香りの中を、颯爽と駆け抜ける光景は、毎年秋に行われる祭りと同様の活気を見せるであろう。
さて、少子高齢化の波はX市内の学校の生徒数の減少にも表れてきている。都心部から交通のアクセスが良いことで、マンション建設も増えてはいるが、その影響による生徒数の増加は一時的なもので、長期的に見れば安定的なものとはいえない。また、高齢者の割合も増え、草野球人口も少しずつ減少してきた。B社の売り上げは徐々にではあるが低下してきている。
【フットサル】
「フットサル(futsal)」は、基本的に室内で行われる5人制のミニサッカーのようなもので、ピッチ(コートのこと)の広さはサッカーの約1/7〜1/8である。また、スライディングタックルなどの接触プレーは禁止されているので、ジュニアから中高年、女性まで気軽に参加できるスポーツとして人気が出てきている。
第1問(配点20点)
ショッピングセンター内の2つの競合店に対してB社の強みを活かした差別化戦略は、具体的にどのようなものか。80字以内で2つ答えよ。
第2問(配点10点)
B社が需要拡大のために、これからターゲットとすべき顧客層とはどのようなものか。30字以内で2つ答えよ。
第3問(配点40点)
B社は顧客の拡大と自社へのロイヤルティ(愛顧)を高めるために、新しい事業を考えている。どのような事業が考えられるか。
(設問1)
B社は自社だけで行えるサービス事業を考えている。それはどのようなものか、120字以内で答えよ。
(設問2)
B社は商店街の裏通りにある銭湯との共同事業を考えている。どのようなサービス事業が考えられるか、120字以内で答えよ。
第4問(配点30点)
B社はインターネットを使って、自社のPRだけではなく、地域内外の人々と何らかのコミュニケーションを図ろうとしている。それはどのようなものが考えられるか、150字以内で答えよ。
平成21年度 組織・人事事例 問題
与件全文
A社は、地方都市W市に拠点をおく菓子メーカーである。資本金4,000万円、店舗数15店舗で、前年売上高約12億円、従業員はパート・アルバイト社員を含めて130名程度である。もともと、地元で採れた農産物を主原料とした地産地消の安全安心な菓子づくりをモットーに、和菓子をメインに評判を得てきた老舗菓子メーカーである。1年半ほど前に、事業拡大を企図して地元の洋菓子メーカーF社を傘下に収め、今日に至っている。
F社を傘下に収める以前、A社はW 市市内の工場で生産した菓子を、地元デパートや県内の観光名所にある10店舗で販売していた。販売員を含め120名程度の従業員のうち80%近くが、パート・アルバイト社員であった。
A社社長が創業者の先代社長から事業を引き継いで以降、A社の売り上げはほぼ横ばいであった。地元限定の地産地消のビジネスモデルでは、現状以上の市場拡大が望めないと判断した成長志向の強いA社社長は、4年ほど前に大都市圏市場への進出を計画し、すぐさまそれを実現した。大都市圏内のデパート進出に際してW市地区産の原材料にこだわる一方で、市場や噂好の違いに配慮して創作菓子にも取り組み、地元の店とは違った店舗コンセプトも打ち出した。地元農家と専属契約を結び原材料の確保を図ると同時に、社内コンテストの開催、社外の菓子職人やコンサルタントへの依頼などによって新しい創作菓子の開発に積極的に取り組んだ。初めてデパートで採用した創作菓子では、工場から半製品を輸送して売場の顧客の目の前で完成品に仕上げる手法を取り入れた。
さらに、大都市圏市場の拡大を目指すA社社長は、高級スーパーへの納品にも挑戦した。当初取引に難色を示していた高級スーパーも、物産展での試験販売が好評であったことから取引を承諾した。
こうした大都市圏進出によって、A社の亮上高は20%程度伸張し、9億円を超えるまでに成長した。この成功の要因のひとつは、原材料重視というコンセプトが消費市場の食の安全に対する意識や自然志向の高まりにマッチしたことである。また、同じ時期に開始したインターネットを活用した通信販売も思いのほか反響が大きく、A社の業績を高めただけでなく、A社と契約していたW市周辺地区の特産品とその生産農家の知名度を高めることにもなった。
確かに、こうした大都市圏での事業展開は成長をもたらしたが、同時に生産体制や販売体制の整備などで新たな対応が求められた。地方都市と比べて競争が激しく市場ニーズの変化が速い大都市圏では新奇さを打ち出すことが必要で、定期的に目先を変える新作菓子を生み出す体制の整備が課題となってきた。とはいえ、これまでW 市地区特産原材料へのこだわりを武器に事業展開してきたA社に、卓越した商品開発のノウハウが備わっていたわけではなかった。
他方、大都市圏での事業展開など事業拡大を模索している中で、A社と取引のある地元のG信用金庫からF社の買収の具体的な話が持ち込まれていた。幾度となく提示された案件であったが、A社社長は逡巡していた。A社に買収される直前のF社は、資本金1,000万円、従業員数50名(うちパート・.アルバイト社員約20名含む)、売上高約3億円で、市内に店舗併設工場を2カ所所有していた。創業当初からF社に勤めていた菓子職人の技術がその評判を支え、A社同様、W 市周辺のデパートや観光名所などに12店舗を出店していた。しかし、2000年以降、W市郊外にも次々と大規模なショッピングセンターがオープンし有名洋菓子店が出店したために、周辺の競争は一挙に激化した。売り上げが3年間で30%近く落ち込んでしまったF社は、パート・アルバイト社員を中心に人員整理を断行した。その上、後継者問題か顕在化し事業継続を断念せざるを得なくなってしまった。G信用金庫の強い後押しもあって、最初の提案から2年以上の年月を経てA社社長はF社の買収を決定することになる。
完全所有の子会社としてA社社長がF社のトップも兼任し、2つのブランドを継続させた。F社を傘下に取り込んだ後、A社社長は、地元に展開していた両社の店舗ネットワークの再編に取り組んだ。早期に経営体質の強化を図るために、両社で重複している売場の整理統合、死に筋商品の排除と売れ筋商品への絞り込みによって経費削減を進めた。また、生産ラインにもメスを入れた。F社の工場1つも閉鎖され、そこで生産を統括していた洋菓子職人の1人と数人の職人がA社の工場に配置転換され、その他の職人はF社のもう1つの工場に残った。最終的に、A社とF社の従業員40名程度の人員整理を実施した。
しかし、昨年来の景気低迷で、消費市場はますます厳しさを増し、大都市圏でのデパートや高級スーパーの事業も大幅に落ち込んだ。A社の売り上げも、W 市地域ではF触買収前の売上高にまで落ち込む月も見られるようになった。大都市圏のデパート・スーパーに当初から投入していた商品の売り上げに支えられ、かろうじて営業を続けているが、こうした厳しい状況が続くと大都市圏事業の見直しをも迫られるのが実情である。
第1問(配点20点)
F社を買収する以前のA社、およびA社に買収される以前のF社は、それぞれW市周辺で有力な菓子メーカーであった。和菓子、洋菓子といった取扱商品に違いがあるものの、A社とF社の強みには、どのような違いがあると考えられるか。150字以内で述べよ。
第2問(配点20点)
金融機関の後押しがあったにもかかわらず、当初、A社社長は、F社を傘下に収めることに対して、積極的、前向きではなかった。その理由として、どのようなことが考えられるか。F社が直面していた財務上の問題以外で考えられる点について、100字以内で述べよ。
第3問(配点20点)
A社がF社を傘下に収めた結果、買収されたF社の従業員に比べて、買収したA社の従業員のモラールが著しく低下してしまった。両社の人事構成を踏まえた上で、その理由について、100字以内で述べよ。
第4問(配点20点)
A社社長は、生産体制を見直す際に、F社出身のベテランの洋菓子職人をA社工場の責任者に任命した。こうした施策を講じることによって、どのような成果や効果を期待したと考えられるか。100字以内で述べよ。
第5問(配点20点)
現在、A社は、地元市場の不振と、景気低迷に伴う大都市圏事業の縮小といった厳しい経営状況に直面している。急速な業績回復が期待できない中で、短期的に売り上げを増進させるための具体的施策について、中小企業診断士として助言を求められた。どのような助言を行えばよいか、150字以内で述べよ。
A社は、地方都市W市に拠点をおく菓子メーカーである。資本金4,000万円、店舗数15店舗で、前年売上高約12億円、従業員はパート・アルバイト社員を含めて130名程度である。もともと、地元で採れた農産物を主原料とした地産地消の安全安心な菓子づくりをモットーに、和菓子をメインに評判を得てきた老舗菓子メーカーである。1年半ほど前に、事業拡大を企図して地元の洋菓子メーカーF社を傘下に収め、今日に至っている。
F社を傘下に収める以前、A社はW 市市内の工場で生産した菓子を、地元デパートや県内の観光名所にある10店舗で販売していた。販売員を含め120名程度の従業員のうち80%近くが、パート・アルバイト社員であった。
A社社長が創業者の先代社長から事業を引き継いで以降、A社の売り上げはほぼ横ばいであった。地元限定の地産地消のビジネスモデルでは、現状以上の市場拡大が望めないと判断した成長志向の強いA社社長は、4年ほど前に大都市圏市場への進出を計画し、すぐさまそれを実現した。大都市圏内のデパート進出に際してW市地区産の原材料にこだわる一方で、市場や噂好の違いに配慮して創作菓子にも取り組み、地元の店とは違った店舗コンセプトも打ち出した。地元農家と専属契約を結び原材料の確保を図ると同時に、社内コンテストの開催、社外の菓子職人やコンサルタントへの依頼などによって新しい創作菓子の開発に積極的に取り組んだ。初めてデパートで採用した創作菓子では、工場から半製品を輸送して売場の顧客の目の前で完成品に仕上げる手法を取り入れた。
さらに、大都市圏市場の拡大を目指すA社社長は、高級スーパーへの納品にも挑戦した。当初取引に難色を示していた高級スーパーも、物産展での試験販売が好評であったことから取引を承諾した。
こうした大都市圏進出によって、A社の亮上高は20%程度伸張し、9億円を超えるまでに成長した。この成功の要因のひとつは、原材料重視というコンセプトが消費市場の食の安全に対する意識や自然志向の高まりにマッチしたことである。また、同じ時期に開始したインターネットを活用した通信販売も思いのほか反響が大きく、A社の業績を高めただけでなく、A社と契約していたW市周辺地区の特産品とその生産農家の知名度を高めることにもなった。
確かに、こうした大都市圏での事業展開は成長をもたらしたが、同時に生産体制や販売体制の整備などで新たな対応が求められた。地方都市と比べて競争が激しく市場ニーズの変化が速い大都市圏では新奇さを打ち出すことが必要で、定期的に目先を変える新作菓子を生み出す体制の整備が課題となってきた。とはいえ、これまでW 市地区特産原材料へのこだわりを武器に事業展開してきたA社に、卓越した商品開発のノウハウが備わっていたわけではなかった。
他方、大都市圏での事業展開など事業拡大を模索している中で、A社と取引のある地元のG信用金庫からF社の買収の具体的な話が持ち込まれていた。幾度となく提示された案件であったが、A社社長は逡巡していた。A社に買収される直前のF社は、資本金1,000万円、従業員数50名(うちパート・.アルバイト社員約20名含む)、売上高約3億円で、市内に店舗併設工場を2カ所所有していた。創業当初からF社に勤めていた菓子職人の技術がその評判を支え、A社同様、W 市周辺のデパートや観光名所などに12店舗を出店していた。しかし、2000年以降、W市郊外にも次々と大規模なショッピングセンターがオープンし有名洋菓子店が出店したために、周辺の競争は一挙に激化した。売り上げが3年間で30%近く落ち込んでしまったF社は、パート・アルバイト社員を中心に人員整理を断行した。その上、後継者問題か顕在化し事業継続を断念せざるを得なくなってしまった。G信用金庫の強い後押しもあって、最初の提案から2年以上の年月を経てA社社長はF社の買収を決定することになる。
完全所有の子会社としてA社社長がF社のトップも兼任し、2つのブランドを継続させた。F社を傘下に取り込んだ後、A社社長は、地元に展開していた両社の店舗ネットワークの再編に取り組んだ。早期に経営体質の強化を図るために、両社で重複している売場の整理統合、死に筋商品の排除と売れ筋商品への絞り込みによって経費削減を進めた。また、生産ラインにもメスを入れた。F社の工場1つも閉鎖され、そこで生産を統括していた洋菓子職人の1人と数人の職人がA社の工場に配置転換され、その他の職人はF社のもう1つの工場に残った。最終的に、A社とF社の従業員40名程度の人員整理を実施した。
しかし、昨年来の景気低迷で、消費市場はますます厳しさを増し、大都市圏でのデパートや高級スーパーの事業も大幅に落ち込んだ。A社の売り上げも、W 市地域ではF触買収前の売上高にまで落ち込む月も見られるようになった。大都市圏のデパート・スーパーに当初から投入していた商品の売り上げに支えられ、かろうじて営業を続けているが、こうした厳しい状況が続くと大都市圏事業の見直しをも迫られるのが実情である。
第1問(配点20点)
F社を買収する以前のA社、およびA社に買収される以前のF社は、それぞれW市周辺で有力な菓子メーカーであった。和菓子、洋菓子といった取扱商品に違いがあるものの、A社とF社の強みには、どのような違いがあると考えられるか。150字以内で述べよ。
第2問(配点20点)
金融機関の後押しがあったにもかかわらず、当初、A社社長は、F社を傘下に収めることに対して、積極的、前向きではなかった。その理由として、どのようなことが考えられるか。F社が直面していた財務上の問題以外で考えられる点について、100字以内で述べよ。
第3問(配点20点)
A社がF社を傘下に収めた結果、買収されたF社の従業員に比べて、買収したA社の従業員のモラールが著しく低下してしまった。両社の人事構成を踏まえた上で、その理由について、100字以内で述べよ。
第4問(配点20点)
A社社長は、生産体制を見直す際に、F社出身のベテランの洋菓子職人をA社工場の責任者に任命した。こうした施策を講じることによって、どのような成果や効果を期待したと考えられるか。100字以内で述べよ。
第5問(配点20点)
現在、A社は、地元市場の不振と、景気低迷に伴う大都市圏事業の縮小といった厳しい経営状況に直面している。急速な業績回復が期待できない中で、短期的に売り上げを増進させるための具体的施策について、中小企業診断士として助言を求められた。どのような助言を行えばよいか、150字以内で述べよ。
2010年6月16日水曜日
事例問題にしがみつく方法(平成21年度 財務 第4問)
第4問は、第1問で示した経営指標のうち、利益率に着目している問題だ。D社は米国等への海外輸出も手がけ高収益性を長所としているが、為替変動による売上高の変動リスクが経営の課題になっている。このリスクを低減させることが本設問の目的だ。
第4問(配点20点)
D社は、Y社への売り上げは円建てで支払いを受けているが、海外に輸出する自社製品の支払いは上期末と下期末の2回に分けて米ドルで受け取っている。この為替リスクをヘッジするため、D社は、通常、各半期の期首に予想売上高分の為替予約を行っている。平成21年度上期分は1ドル100円で500万ドルの為替予約(ドルの売り建て)を行った。
(設問1)
平成21年度の上期の売上高は、予想を下回り430万ドルであった。上期末の為替のスポットレートは102円であった。この場合の為替による損益を求めよ(単位:万円)。
(設問2)
D社では、オプションを用いて為替リスクをヘッジすることも検討している。1ドル100円で決済するためには、どのようなオプションを用いるべきか、50字以内で(a)欄に説明せよ。
また、オプションを用いた場合の長所と短所を100字以内で(b)欄に説明せよ。
まず題意から考えよう!
題意:
(設問1)
為替による損益を求めよ
(設問2)
(a)どのようなオプションを用いるべきか説明せよ
(b)オプションを用いた場合の長所と短所を説明せよ
解答の骨子 (設問2)について
(a)例:D社は、~のようなオプションを用いるべきである。
※50字なので1文で記述する。
→要約力を強化しよう!
(b)例:オプションを用いた場合の長所は、~である。短所は、~である。
※具体的な理由を述べるときは、因果関係に注意して書くようにする。
→ここでは「~することで、~の点である」という表現を使った。
次に制約条件を考える!
リード文の制約条件:
①海外に輸出する自社製品の支払い
上期末と下期末の2回に分けて米ドルで受け取っている
②この為替リスクをヘッジするため
各半期の期首に予想売上高分の為替予約
平成21年度上期分は1ドル100円で500万ドルの為替予約(ドルの売り建て)
制約条件:
(設問1)
①平成21年度の上期の売上高は、予想を下回り430万ドル
②上期末の為替のスポットレートは102円
③単位:万円
(設問2)
(a)(b)オプションを用いて為替リスクをヘッジする
(a)1ドル100円で決済するため
解答へのアプローチ!
(設問1)
平成21年度上期分は1ドル100円で500万ドルの為替予約
実際の売上高430万ドル⇒70万ドルが不足
上期の為替レートは1ドル102円、このレートで70万ドル調達する
70万×102円=7,140万円
この70万ドルを為替予約レート1ドル100円で売ることになる
70万×100円=7,000万円
差し引き140万円の為替差損となる
(設問2)
前提知識:過去問まとめ資料より(平成13年 第3問 設問2)
コールオプション:買い手に対して「買う」権利を与えるもの
プットオプション:買い手に対して「売る」権利を与えるもの
アメリカンタイプ:権利行使期間内の営業日であればいつでも権利行使が可能
ヨーロピアンタイプ:約定の権利行使日(確定日)にのみ権利行使が可能
輸入業者:外国通貨のコールオプションを購入する。
→円高:権利放棄、円安:権利行使
輸出業者:外国通貨のプットオプションを購入する。
→円高:権利行使、円安:権利放棄
(a)
D社は輸出業者
→外国通貨のプットオプションを購入する
→外国通貨は米ドル
→1ドル100円で決済する(制約条件より)
(b)
D社は輸出業者
→円高:権利行使、円安:権利放棄
→円高:権利行使
利益は「円高による為替差益-オプションの購入料」⇒利益減少:短所
→円安:権利放棄
損失は「オプションの購入料のみ」⇒円安による為替差損の回避:長所
問題の階層を考える!
経営分析
→経営指標:売上高総利益(利益率)、為替差損による収益減少リスクの低減
財務事例の対応方法
以上から導き出した解答:
今回で財務事例は、終了だ。やはり経営分析でいかに得点が得られるかが、合格の成否を握ると感じた。経営分析は毎年必ず出題されており、傾向も大体同じだ。過去問を繰返し解くことで、経営指標の選択方法や経営分析独特の言い回しを覚えていくといいだろう。
第4問(配点20点)
D社は、Y社への売り上げは円建てで支払いを受けているが、海外に輸出する自社製品の支払いは上期末と下期末の2回に分けて米ドルで受け取っている。この為替リスクをヘッジするため、D社は、通常、各半期の期首に予想売上高分の為替予約を行っている。平成21年度上期分は1ドル100円で500万ドルの為替予約(ドルの売り建て)を行った。
(設問1)
平成21年度の上期の売上高は、予想を下回り430万ドルであった。上期末の為替のスポットレートは102円であった。この場合の為替による損益を求めよ(単位:万円)。
(設問2)
D社では、オプションを用いて為替リスクをヘッジすることも検討している。1ドル100円で決済するためには、どのようなオプションを用いるべきか、50字以内で(a)欄に説明せよ。
また、オプションを用いた場合の長所と短所を100字以内で(b)欄に説明せよ。
まず題意から考えよう!
題意:
(設問1)
為替による損益を求めよ
(設問2)
(a)どのようなオプションを用いるべきか説明せよ
(b)オプションを用いた場合の長所と短所を説明せよ
解答の骨子 (設問2)について
(a)例:D社は、~のようなオプションを用いるべきである。
※50字なので1文で記述する。
→要約力を強化しよう!
(b)例:オプションを用いた場合の長所は、~である。短所は、~である。
※具体的な理由を述べるときは、因果関係に注意して書くようにする。
→ここでは「~することで、~の点である」という表現を使った。
次に制約条件を考える!
リード文の制約条件:
①海外に輸出する自社製品の支払い
上期末と下期末の2回に分けて米ドルで受け取っている
②この為替リスクをヘッジするため
各半期の期首に予想売上高分の為替予約
平成21年度上期分は1ドル100円で500万ドルの為替予約(ドルの売り建て)
制約条件:
(設問1)
①平成21年度の上期の売上高は、予想を下回り430万ドル
②上期末の為替のスポットレートは102円
③単位:万円
(設問2)
(a)(b)オプションを用いて為替リスクをヘッジする
(a)1ドル100円で決済するため
解答へのアプローチ!
(設問1)
平成21年度上期分は1ドル100円で500万ドルの為替予約
実際の売上高430万ドル⇒70万ドルが不足
上期の為替レートは1ドル102円、このレートで70万ドル調達する
70万×102円=7,140万円
この70万ドルを為替予約レート1ドル100円で売ることになる
70万×100円=7,000万円
差し引き140万円の為替差損となる
(設問2)
前提知識:過去問まとめ資料より(平成13年 第3問 設問2)
コールオプション:買い手に対して「買う」権利を与えるもの
プットオプション:買い手に対して「売る」権利を与えるもの
アメリカンタイプ:権利行使期間内の営業日であればいつでも権利行使が可能
ヨーロピアンタイプ:約定の権利行使日(確定日)にのみ権利行使が可能
輸入業者:外国通貨のコールオプションを購入する。
→円高:権利放棄、円安:権利行使
輸出業者:外国通貨のプットオプションを購入する。
→円高:権利行使、円安:権利放棄
(a)
D社は輸出業者
→外国通貨のプットオプションを購入する
→外国通貨は米ドル
→1ドル100円で決済する(制約条件より)
(b)
D社は輸出業者
→円高:権利行使、円安:権利放棄
→円高:権利行使
利益は「円高による為替差益-オプションの購入料」⇒利益減少:短所
→円安:権利放棄
損失は「オプションの購入料のみ」⇒円安による為替差損の回避:長所
問題の階層を考える!
経営分析
→経営指標:売上高総利益(利益率)、為替差損による収益減少リスクの低減
財務事例の対応方法
以上から導き出した解答:
(設問1)
-140(万円)
(設問2)
(a)D社は為替リスクをヘッジするため、1ドル100円で決済できる米ドルのプットオプションを用いるべきである。51字
(b)オプションを用いた場合の長所は、円安になった場合、権利放棄することで損失がオプション料分だけに抑制できる点である。短所は、円高になった場合、権利行使をすることでオプション料分の利益が減少する点である。100字
今回で財務事例は、終了だ。やはり経営分析でいかに得点が得られるかが、合格の成否を握ると感じた。経営分析は毎年必ず出題されており、傾向も大体同じだ。過去問を繰返し解くことで、経営指標の選択方法や経営分析独特の言い回しを覚えていくといいだろう。
2010年6月14日月曜日
事例問題にしがみつく方法(平成21年度 財務 第3問)
第3問は、第1問で示した経営指標のうち、有形固定資産(固定費)について改善する問題だ。
第3問(配点20点)
D社では、売上高と利益の関係を把握するため、経常利益ベースでの損益分岐点分析によるシミューションを開始した。平成20年度の売上原価に占める固定費は1,598百万円である。推計によると、平成21年度に景気が減速した場合、20%程度の売上高減少が見込まれることがわかった。
また、本社(土地及び建物)を売却しない場合の平成21年度の固定費および営業外損益は平成20年度と同額とする。
なお、金利を8%とし、販売費及び一般管理費、営業外損益はすべて固定費とする。
(設問1)
D社の平成20年度の損益分岐点売上高を求め、(a)欄に記入せよ。
また、本社を売却しない場合について、平成21年度の売上高が平成20年度より20%減少したときに予想される経常利益を求め、(b)欄に記入せよ。
なお、計算結果は百万円単位で解答し、百万円未満を四捨五入すること。
(設問2)
本社を売却した場合の平成21年度の損益分岐点売上高を求め、(a)欄に記入せよ(計算結果は百万円単位で解答し、百万円未満を四捨五入すること)。
また、この結果、営業レバレッジがどのように変化し、その変化がD社の業績にどのような影響を与えるかを、財務・会計の観点から100字以内で(b)欄に説明せよ。
まず題意から考えよう!
題意:
(設問1) 本社を売却しない場合
(a)平成20年度の損益分岐点売上高を求めよ
(b)平成21年度の予想される経常利益を求めよ
(設問2) 本社を売却した場合
(a)平成21年度の損益分岐点売上高を求めよ
(b)営業レバレッジがどのように変化し、その変化がどのような影響を与えるか説明せよ
解答の骨子 (設問2)(b)について
例1:営業レバレッジは、~のように変化する。
その変化は、D社の業績に~のような影響を与える。
例2:営業レバレッジは、~のように変化する。
D社の業績に与える影響は、~である。
※具体的な理由を述べるときは、因果関係に注意して書くようにする。
→「~により、~である」「~のため、~である」という表現を使う。
次に制約条件を考える!
リード文の制約条件:
①平成20年度の売上原価に占める固定費は1,598百万円
②平成21年度に景気が減速した場合、20%程度の売上高減少が見込まれる
③本社を売却しない場合
平成21年度の固定費および営業外損益は平成20年度と同額
④金利8%
⑤販売費及び一般管理費、営業外損益はすべて固定費
制約条件:
(設問1) 本社を売却しない場合
(a)(b)計算結果は百万円単位で解答、百万円未満を四捨五入
(b)平成21年度の売上高が平成20年度より20%減少
(設問2) 本社を売却した場合
(a)(b)計算結果は百万円単位で解答、百万円未満を四捨五入
(b)営業レバレッジ、D社の業績、財務・会計の観点から説明する
→営業レバレッジ:大きくなる、小さくなる等の変化をはじめに書く
→D社の業績:本社売却と売上高20%減少による影響を書く
解答へのアプローチ!
(設問1)本社を売却しない場合
(a)平成20年度
売上高:5,611
売上原価:4,204(固定費:1,598、変動費:4,204-1,598=2,606)
販管費:931(固定費:931)
営業外収益:3
営業外費用:208(固定費:205)
変動費:2,606、固定費:2,734、限界利益:5,611-2,606=3,005
限界利益率:3,005/5,611
損益分岐点売上高=固定費/限界利益率
=2,734/(3,005/5,611)=2,734×5,611÷3,005=5,105
(b)平成21年度
売上高:5,611×(1-0.2)=4,488.8
変動費:2,606×(1-0.2)=2,084.8
固定費:2,734
経常利益:4,488.8-2,084.8-2,734=-330
→設問1はサービス問題。絶対にゲットすべし!
(設問2)
(a)平成21年度
売上高:4,488.8
変動費:2,084.8
固定費:2,395※
限界利益:4,488.8-2,084.8=2,404
限界利益率:2,404/4,488.8→変化なし
損益分岐点売上高=固定費/限界利益率
=2,395/(2,404/4,488.8)=2,395×4,488.8÷2,404=4,472
※固定費 2,395百万円
本社の売却益:18億円(1,800百万円)
金利分 借入金1,800×金利8%=144百万円
∴営業外費用=208-144=64百万円
オフィスの賃貸料=年4,500万円(45百万円)増加
本社の年間委託費=6,000万円(60百万円)増加
販売費・一般管理費=3億円(300百万円)削減
∴販売費・一般管理費=931+45+60-300=736百万円
固定費=売上原価に占める固定費1,598+販売費・一般管理費736
+営業外費用64-営業外収益3=2,395百万円
経常利益:4,488.8-2,084.8-2,395=9(黒字)
→固定費計算で間違える可能性大!設問2の解答は具体的な数値は書かないことにしよう!
→ただし借入金利と販管費の減少により固定費は減少することは分かる
(b)
前提知識:過去問まとめ資料より(平成15年 第2問 設問2)
企業収益の不確実性、変動制をもたらす要因
→①企業の費用構造の差(ビジネスリスク)
→②負債による資金調達から生じる固定的な利子支払い(財務リスク)
営業レバレッジ
→変動費、固定費の費用構造の差によって、売上変化が利益変化に影響を与えること
→変動比率の低下
(材料費、外注費、荷造運賃費、仕入原価 等)
→固定費総額の抑制
(人件費、減価償却費、経費、金融費用 等)
設問1の損益分岐点売上高の計算結果から考察できることは?
→本社を売却した場合、借入金利や販管費などの固定費が減少する
→固定費が減少すると、損益分岐点売上高は低下する
→損益分岐点売上高が低下すると、売上げが低下しても利益を確保しやすくなる
営業レバレッジの変化は?
→固定費の減少により営業レバレッジは低下する
その変化が与える影響は?
→営業レバレッジが低下すると売上変化に対する利益変化の割合が小さくなる
→景気の減速で売上高が減少しても利益に与える影響が小さくなり、D社の業績低下を抑制できる
問題の階層を考える!
経営分析
→経営指標:有形固定資産回転率(固定費)における問題点の解決
財務事例の対応方法
以上から導き出した解答:
解説の途中で出てきた「過去問まとめ」資料は、平成13年度~平成18年度までの過去問をまとめた資料だ。受験生時代は、今ここで紹介している題意や制約条件、切り口などを各設問ごとにエクセルでまとめて繰返し解いていた。
第3問(配点20点)
D社では、売上高と利益の関係を把握するため、経常利益ベースでの損益分岐点分析によるシミューションを開始した。平成20年度の売上原価に占める固定費は1,598百万円である。推計によると、平成21年度に景気が減速した場合、20%程度の売上高減少が見込まれることがわかった。
また、本社(土地及び建物)を売却しない場合の平成21年度の固定費および営業外損益は平成20年度と同額とする。
なお、金利を8%とし、販売費及び一般管理費、営業外損益はすべて固定費とする。
(設問1)
D社の平成20年度の損益分岐点売上高を求め、(a)欄に記入せよ。
また、本社を売却しない場合について、平成21年度の売上高が平成20年度より20%減少したときに予想される経常利益を求め、(b)欄に記入せよ。
なお、計算結果は百万円単位で解答し、百万円未満を四捨五入すること。
(設問2)
本社を売却した場合の平成21年度の損益分岐点売上高を求め、(a)欄に記入せよ(計算結果は百万円単位で解答し、百万円未満を四捨五入すること)。
また、この結果、営業レバレッジがどのように変化し、その変化がD社の業績にどのような影響を与えるかを、財務・会計の観点から100字以内で(b)欄に説明せよ。
まず題意から考えよう!
題意:
(設問1) 本社を売却しない場合
(a)平成20年度の損益分岐点売上高を求めよ
(b)平成21年度の予想される経常利益を求めよ
(設問2) 本社を売却した場合
(a)平成21年度の損益分岐点売上高を求めよ
(b)営業レバレッジがどのように変化し、その変化がどのような影響を与えるか説明せよ
解答の骨子 (設問2)(b)について
例1:営業レバレッジは、~のように変化する。
その変化は、D社の業績に~のような影響を与える。
例2:営業レバレッジは、~のように変化する。
D社の業績に与える影響は、~である。
※具体的な理由を述べるときは、因果関係に注意して書くようにする。
→「~により、~である」「~のため、~である」という表現を使う。
次に制約条件を考える!
リード文の制約条件:
①平成20年度の売上原価に占める固定費は1,598百万円
②平成21年度に景気が減速した場合、20%程度の売上高減少が見込まれる
③本社を売却しない場合
平成21年度の固定費および営業外損益は平成20年度と同額
④金利8%
⑤販売費及び一般管理費、営業外損益はすべて固定費
制約条件:
(設問1) 本社を売却しない場合
(a)(b)計算結果は百万円単位で解答、百万円未満を四捨五入
(b)平成21年度の売上高が平成20年度より20%減少
(設問2) 本社を売却した場合
(a)(b)計算結果は百万円単位で解答、百万円未満を四捨五入
(b)営業レバレッジ、D社の業績、財務・会計の観点から説明する
→営業レバレッジ:大きくなる、小さくなる等の変化をはじめに書く
→D社の業績:本社売却と売上高20%減少による影響を書く
解答へのアプローチ!
(設問1)本社を売却しない場合
(a)平成20年度
売上高:5,611
売上原価:4,204(固定費:1,598、変動費:4,204-1,598=2,606)
販管費:931(固定費:931)
営業外収益:3
営業外費用:208(固定費:205)
変動費:2,606、固定費:2,734、限界利益:5,611-2,606=3,005
限界利益率:3,005/5,611
損益分岐点売上高=固定費/限界利益率
=2,734/(3,005/5,611)=2,734×5,611÷3,005=5,105
(b)平成21年度
売上高:5,611×(1-0.2)=4,488.8
変動費:2,606×(1-0.2)=2,084.8
固定費:2,734
経常利益:4,488.8-2,084.8-2,734=-330
→設問1はサービス問題。絶対にゲットすべし!
(設問2)
(a)平成21年度
売上高:4,488.8
変動費:2,084.8
固定費:2,395※
限界利益:4,488.8-2,084.8=2,404
限界利益率:2,404/4,488.8→変化なし
損益分岐点売上高=固定費/限界利益率
=2,395/(2,404/4,488.8)=2,395×4,488.8÷2,404=4,472
※固定費 2,395百万円
本社の売却益:18億円(1,800百万円)
金利分 借入金1,800×金利8%=144百万円
∴営業外費用=208-144=64百万円
オフィスの賃貸料=年4,500万円(45百万円)増加
本社の年間委託費=6,000万円(60百万円)増加
販売費・一般管理費=3億円(300百万円)削減
∴販売費・一般管理費=931+45+60-300=736百万円
固定費=売上原価に占める固定費1,598+販売費・一般管理費736
+営業外費用64-営業外収益3=2,395百万円
経常利益:4,488.8-2,084.8-2,395=9(黒字)
→固定費計算で間違える可能性大!設問2の解答は具体的な数値は書かないことにしよう!
→ただし借入金利と販管費の減少により固定費は減少することは分かる
(b)
前提知識:過去問まとめ資料より(平成15年 第2問 設問2)
企業収益の不確実性、変動制をもたらす要因
→①企業の費用構造の差(ビジネスリスク)
→②負債による資金調達から生じる固定的な利子支払い(財務リスク)
営業レバレッジ
→変動費、固定費の費用構造の差によって、売上変化が利益変化に影響を与えること
→変動比率の低下
(材料費、外注費、荷造運賃費、仕入原価 等)
→固定費総額の抑制
(人件費、減価償却費、経費、金融費用 等)
設問1の損益分岐点売上高の計算結果から考察できることは?
→本社を売却した場合、借入金利や販管費などの固定費が減少する
→固定費が減少すると、損益分岐点売上高は低下する
→損益分岐点売上高が低下すると、売上げが低下しても利益を確保しやすくなる
営業レバレッジの変化は?
→固定費の減少により営業レバレッジは低下する
その変化が与える影響は?
→営業レバレッジが低下すると売上変化に対する利益変化の割合が小さくなる
→景気の減速で売上高が減少しても利益に与える影響が小さくなり、D社の業績低下を抑制できる
参考 意思決定会計講義ノートより
意思決定会計講義ノートのp.13には、経営レバレッジ係数の求め方が紹介されている。
売上高(営業量)が1単位変動した時に営業利益がどれだけ変動するかを示す指標が経営レバレッジである。売上高の変動以上に営業利益が変動するのは製造・販売コストに固定費が存在するからである。固定費の割合が大きければ大きいほど経営レバレッジは大きくなる。経営レバレッジ係数は次の式で求められる。
経営レバレッジ係数=営業利益の変化率/売上高の変化率
=(営業利益の変動/営業利益)/(売上高の変動/売上高)
=限界利益/営業利益
確かめてみるとわかるが、売上高が損益分岐点売上高に近づけば近づくほど経営レバレッジ係数は大きくなる。
問題の階層を考える!
経営分析
→経営指標:有形固定資産回転率(固定費)における問題点の解決
財務事例の対応方法
以上から導き出した解答:
(設問1)
(a)5,105(百万円)
(b)-330(百万円)
(設問2)
(a)4,472 百万円
(b)固定費の減少により営業レバレッジは低下する。営業レバレッジが低下すると売上変化に対する利益変化が小さくなるため、景気の減速で売上高が減少しても利益に与える影響が小さくなり、D社の業績低下を抑制できる。100字
解説の途中で出てきた「過去問まとめ」資料は、平成13年度~平成18年度までの過去問をまとめた資料だ。受験生時代は、今ここで紹介している題意や制約条件、切り口などを各設問ごとにエクセルでまとめて繰返し解いていた。
2010年6月11日金曜日
事例問題にしがみつく方法(平成21年度 財務 第2問)
さて、第2問を解いてみよう!
この設問からは、第1問で示した経営指標を悪くしている問題点を改善していく。第2問は、借入金の問題点が改善しそうだ。
第2問(配点20点)
近年の経済のグローバル化に伴って経営環境は不確実性を増している。D社の平成20年度の期首の投下総資本は4,907百万円であり、それに対する平成20年度の総資本営業利益率は9.7%であった。平成21年度の総資本営業利益率は前年並みになるか、もしくは景気が減速すれば-2.5%になると予想され、それぞれの状況が生起する確率は1/2と想定される。負債の平均資本コスト(負債総額に占める利息の割合)を4.9%とし、支払利息以外の営業外損益および特別損益はゼロと仮定して、次の設問に答えよ。
(設問1)
本社(土地及び建物)を売却しない場合、平成21年度の税引前自己資本利益率の期待値を求めよ(計算結果は%で解答し、小数第3位を四捨五入すること)。
(設問2)
本社(土地及び建物)を売却した場合、18億円のキャッシュフローが得られる。これを全額負債の返済に充当することを検討している。この場合、景気変動による税引前自己資本利益率のバラツキがどのように変化するかを100字以内で説明せよ。
まず題意から考えよう!
リード文の題意:次の設問に答えよ
題意:
(設問1)平成21年度の税引前自己資本利益率の期待値を求めよ
(設問2)税引前自己資本利益率のバラツキがどのように変化するか説明せよ
解答の骨子 (設問2)について
例:税引前自己資本利益率のバラつきは~に変化する。理由は~のためである。
※「税引前自己資本利益率のバラツキ」について、結論先出しで答える。
※具体的な理由を述べるときは、因果関係に注意して書くようにする。
→「~により、~のためである」という表現を使う。
次に制約条件を考える!
リード文の制約条件:
①近年の経済のグローバル化に伴って経営環境は不確実性を増している
②平成20年度の期首の投下総資本:4,907百万円、総資本営業利益率:9.7%
③平成21年度の総資本営業利益率:前年並み or 景気が減速すれば-2.5%、確率:1/2
④負債の平均資本コスト:4.9%
⑤支払利息以外の営業外損益および特別損益:ゼロ
制約条件:
(設問1)計算結果は%で解答、小数第3位を四捨五入する
(設問2)本社(土地及び建物)を売却、18億円のキャッシュフロー、全額負債の返済に充当、景気変動
→本社の売却益を全額負債の返済
→金利負担の減少
解答へのアプローチ!
(設問1)
前年並み:営業利益=総資本5,012×総資本営業利益率9.7%=486.164
景気減速:営業利益=総資本5,012×総資本営業利益率-2.5%=-125.3
支払利息=負債総額3,731×負債の平均資本コスト4.9%=182.819
前年並み:税引前利益=営業利益486.164-支払利息182.819=303.345
景気減速:税引前利益=営業利益-125.3-支払利息182.819=-308.119
前年並み:税引前自己資本利益率=税引前利益303.345÷自己資本1,281=23.68%
景気減速:税引前自己資本利益率=税引前利益-308.119÷自己資本1,281=-24.05%
税引前自己資本利益率の期待値
=23.68%×1/2+(-24.05%)×1/2=11.84-12.03=-0.19%
→ムリ! 本試験では緊張しているし、間違える可能性大。
→(設問2)の文章問題だけは何とか得点しよう!
(設問2)
何言ってるかさっぱりわからん!こういった場合は、常識的な範囲内で解答を作ろう!
①基本的に問題点を解決するために、設問を解いているはずだ。
②そうした場合、負債が返済されると何かが改善されるはず。
③税引前自己資本利益率のバラツキは小さくなった方が改善された気がする。
じゃ、理由づけ
④負債返済により金利負担が減少する
⑤景気変動により売り上げ減少するも利益率の低下が抑えられる
→結論部分は「税引前自己資本利益率のバラツキは小さくなる。」で答えよう!
→理由部分は④と⑤をうまくまとめよう!
問題の階層を考える!
経営分析
→経営指標:自己資本比率(借入金)における問題点の解決
財務事例の対応方法
以上から導き出した解答:
この設問からは、第1問で示した経営指標を悪くしている問題点を改善していく。第2問は、借入金の問題点が改善しそうだ。
第2問(配点20点)
近年の経済のグローバル化に伴って経営環境は不確実性を増している。D社の平成20年度の期首の投下総資本は4,907百万円であり、それに対する平成20年度の総資本営業利益率は9.7%であった。平成21年度の総資本営業利益率は前年並みになるか、もしくは景気が減速すれば-2.5%になると予想され、それぞれの状況が生起する確率は1/2と想定される。負債の平均資本コスト(負債総額に占める利息の割合)を4.9%とし、支払利息以外の営業外損益および特別損益はゼロと仮定して、次の設問に答えよ。
(設問1)
本社(土地及び建物)を売却しない場合、平成21年度の税引前自己資本利益率の期待値を求めよ(計算結果は%で解答し、小数第3位を四捨五入すること)。
(設問2)
本社(土地及び建物)を売却した場合、18億円のキャッシュフローが得られる。これを全額負債の返済に充当することを検討している。この場合、景気変動による税引前自己資本利益率のバラツキがどのように変化するかを100字以内で説明せよ。
まず題意から考えよう!
リード文の題意:次の設問に答えよ
題意:
(設問1)平成21年度の税引前自己資本利益率の期待値を求めよ
(設問2)税引前自己資本利益率のバラツキがどのように変化するか説明せよ
解答の骨子 (設問2)について
例:税引前自己資本利益率のバラつきは~に変化する。理由は~のためである。
※「税引前自己資本利益率のバラツキ」について、結論先出しで答える。
※具体的な理由を述べるときは、因果関係に注意して書くようにする。
→「~により、~のためである」という表現を使う。
次に制約条件を考える!
リード文の制約条件:
①近年の経済のグローバル化に伴って経営環境は不確実性を増している
②平成20年度の期首の投下総資本:4,907百万円、総資本営業利益率:9.7%
③平成21年度の総資本営業利益率:前年並み or 景気が減速すれば-2.5%、確率:1/2
④負債の平均資本コスト:4.9%
⑤支払利息以外の営業外損益および特別損益:ゼロ
制約条件:
(設問1)計算結果は%で解答、小数第3位を四捨五入する
(設問2)本社(土地及び建物)を売却、18億円のキャッシュフロー、全額負債の返済に充当、景気変動
→本社の売却益を全額負債の返済
→金利負担の減少
解答へのアプローチ!
(設問1)
前年並み:営業利益=総資本5,012×総資本営業利益率9.7%=486.164
景気減速:営業利益=総資本5,012×総資本営業利益率-2.5%=-125.3
支払利息=負債総額3,731×負債の平均資本コスト4.9%=182.819
前年並み:税引前利益=営業利益486.164-支払利息182.819=303.345
景気減速:税引前利益=営業利益-125.3-支払利息182.819=-308.119
前年並み:税引前自己資本利益率=税引前利益303.345÷自己資本1,281=23.68%
景気減速:税引前自己資本利益率=税引前利益-308.119÷自己資本1,281=-24.05%
税引前自己資本利益率の期待値
=23.68%×1/2+(-24.05%)×1/2=11.84-12.03=-0.19%
→ムリ! 本試験では緊張しているし、間違える可能性大。
→(設問2)の文章問題だけは何とか得点しよう!
(設問2)
何言ってるかさっぱりわからん!こういった場合は、常識的な範囲内で解答を作ろう!
①基本的に問題点を解決するために、設問を解いているはずだ。
②そうした場合、負債が返済されると何かが改善されるはず。
③税引前自己資本利益率のバラツキは小さくなった方が改善された気がする。
じゃ、理由づけ
④負債返済により金利負担が減少する
⑤景気変動により売り上げ減少するも利益率の低下が抑えられる
→結論部分は「税引前自己資本利益率のバラツキは小さくなる。」で答えよう!
→理由部分は④と⑤をうまくまとめよう!
問題の階層を考える!
経営分析
→経営指標:自己資本比率(借入金)における問題点の解決
財務事例の対応方法
以上から導き出した解答:
(設問1)
-0.19(%)
(設問2)
税引前自己資本利益率のバラつきは小さくなる。理由は、本社の売却益を全額負債の返済に充当することにより、景気変動で売り上げが減少した場合でも金利負担が減少し、利益率の低下が抑えられるためである。96字
2010年6月9日水曜日
事例問題にしがみつく方法(平成21年度 財務 第1問)
さあ、平成21年度事例のラスト、財務事例だ。
財務事例の中で最も重要なのが経営分析だ。配点比率も高く、その後続く設問と密接に関係する部分だからだ。毎年、第1問で経営分析を聞いてくるので、どのような解答を書くのかはあらかじめ準備できる。この点は、財務事例の対応方法で説明しているので確認をして欲しい。
第1問(配点40点)
D社の平成20年度の財務諸表を用いて経営分析を行い、この企業の財務上の長所・短所のうち重要と思われるものを3つ取り上げ、その各々について、長所・短所の根拠を最も的確に示す経営指標を1つだけあげて、その名称を(a)欄に示し、経営指標値を計算(小数第3位を四捨五入すること)して(b)欄に示した上で、その長所・短所が生じた原因をD社のこれまでの経営状況に照らして(c)欄に60字以内で説明せよ。
まず題意から考えよう!
題意:
(a)長所・短所の根拠を最も的確に示す経営指標を示せ
(b)(a)で示した経営指標値を計算せよ
(c)長所・短所が生じた原因を説明せよ
解答の骨子 (c)について
例:長所・短所が生じた原因は、~ためである。
※60字と字数が少ないが、ここでも因果関係に注意して書くようにする。
→「~により、~である」「~のため、~である」という表現を使う。
次に制約条件を考える!
制約条件:
(a)長所・短所の根拠を最も的確に示す
(b)小数第3位を四捨五入する
(c)D社のこれまでの経営状況に照らして
→財務諸表上の数字(定量的な情報)が悪化したことを単に述べるだけではダメ!
→与件で与えられたD社の経営状況(定性的な情報)も踏まえて分析を行う
与件を活用する!
とりあえず、機械的に代表的な経営指標は計算してしまおう!
財務諸表より(D社/同業他社)
○売上高対総利益率 …25.08%/20.92%
○売上高対営業利益率…8.48%/3.99%
○売上高対経常利益率…4.83%/1.81%
○棚卸資産回転率 …7.11回/6.03回
×有形固定資産回転率…2.62回/4.53回
○売上債権回転率 …5.84回/5.20回
×流動比率 …137.20%/144.22%
○当座比率 …90.04%/88.39%
×自己資本比率 …25.56%/29.45%
以下の経営指標は、与件に費用面の記述があった場合に考慮する。
○売上高対売上原価率…74.92%/79.08%
○販売費・管理費比率…16.59%/16.93%
※売上高対人件費比率は不明
→利益率は同業他社と比べて良好である:長所
→同業他社より悪い指標は有形固定資産回転率、流動比率、自己資本比率である
→この中から利益率、回転率、安全性を選択すると、
利益率:与件からどの利益率を選ぶか判断する
回転率:最も資産効率の悪い「有形固定資産回転率」を選択する
安全性:「流動比率」と「自己資本比率」は与件からどちらを選ぶか判断する
①
「D社は高い縫製加工技術による自社製品に定評を有しており、その技術力から国内大手のY社より有名ブランド品のOEM生産を受託している」
「自社ブランドを立ち上げ、最近では米国等への海外輸出も手がけている」
→高い縫製加工技術
→大手Y社より有名ブランド品のOEM生産を受託
→自社ブランドの海外輸出
⇒高い技術、ブランドによる高付加価値製品:収益性が高い
②
「事業の拡大に伴って手狭になったため隣地の中古不動産を買い増ししてきた」
→駅前という地価が高い場所で中古不動産を買い増し
⇒有形固定資産の増加:資産効率が悪い
③
「本社を売却した場合、18億円の手取りのキャッシュフローが得られるので、これを全額負債の返済に充当する」
→18億円もの負債を抱えている
→中古不動産を買い増し時に長期借入金による資金調達
⇒借入金の増加:資本の安定性が低下
問題の階層を考える!
経営分析
→財務事例の環境分析
財務事例の対応方法
以上から導き出した解答:
財務事例の中で最も重要なのが経営分析だ。配点比率も高く、その後続く設問と密接に関係する部分だからだ。毎年、第1問で経営分析を聞いてくるので、どのような解答を書くのかはあらかじめ準備できる。この点は、財務事例の対応方法で説明しているので確認をして欲しい。
第1問(配点40点)
D社の平成20年度の財務諸表を用いて経営分析を行い、この企業の財務上の長所・短所のうち重要と思われるものを3つ取り上げ、その各々について、長所・短所の根拠を最も的確に示す経営指標を1つだけあげて、その名称を(a)欄に示し、経営指標値を計算(小数第3位を四捨五入すること)して(b)欄に示した上で、その長所・短所が生じた原因をD社のこれまでの経営状況に照らして(c)欄に60字以内で説明せよ。
まず題意から考えよう!
題意:
(a)長所・短所の根拠を最も的確に示す経営指標を示せ
(b)(a)で示した経営指標値を計算せよ
(c)長所・短所が生じた原因を説明せよ
解答の骨子 (c)について
例:長所・短所が生じた原因は、~ためである。
※60字と字数が少ないが、ここでも因果関係に注意して書くようにする。
→「~により、~である」「~のため、~である」という表現を使う。
次に制約条件を考える!
制約条件:
(a)長所・短所の根拠を最も的確に示す
(b)小数第3位を四捨五入する
(c)D社のこれまでの経営状況に照らして
→財務諸表上の数字(定量的な情報)が悪化したことを単に述べるだけではダメ!
→与件で与えられたD社の経営状況(定性的な情報)も踏まえて分析を行う
与件を活用する!
とりあえず、機械的に代表的な経営指標は計算してしまおう!
財務諸表より(D社/同業他社)
○売上高対総利益率 …25.08%/20.92%
○売上高対営業利益率…8.48%/3.99%
○売上高対経常利益率…4.83%/1.81%
○棚卸資産回転率 …7.11回/6.03回
×有形固定資産回転率…2.62回/4.53回
○売上債権回転率 …5.84回/5.20回
×流動比率 …137.20%/144.22%
○当座比率 …90.04%/88.39%
×自己資本比率 …25.56%/29.45%
以下の経営指標は、与件に費用面の記述があった場合に考慮する。
○売上高対売上原価率…74.92%/79.08%
○販売費・管理費比率…16.59%/16.93%
※売上高対人件費比率は不明
→利益率は同業他社と比べて良好である:長所
→同業他社より悪い指標は有形固定資産回転率、流動比率、自己資本比率である
→この中から利益率、回転率、安全性を選択すると、
利益率:与件からどの利益率を選ぶか判断する
回転率:最も資産効率の悪い「有形固定資産回転率」を選択する
安全性:「流動比率」と「自己資本比率」は与件からどちらを選ぶか判断する
①
「D社は高い縫製加工技術による自社製品に定評を有しており、その技術力から国内大手のY社より有名ブランド品のOEM生産を受託している」
「自社ブランドを立ち上げ、最近では米国等への海外輸出も手がけている」
→高い縫製加工技術
→大手Y社より有名ブランド品のOEM生産を受託
→自社ブランドの海外輸出
⇒高い技術、ブランドによる高付加価値製品:収益性が高い
②
「事業の拡大に伴って手狭になったため隣地の中古不動産を買い増ししてきた」
→駅前という地価が高い場所で中古不動産を買い増し
⇒有形固定資産の増加:資産効率が悪い
③
「本社を売却した場合、18億円の手取りのキャッシュフローが得られるので、これを全額負債の返済に充当する」
→18億円もの負債を抱えている
→中古不動産を買い増し時に長期借入金による資金調達
⇒借入金の増加:資本の安定性が低下
問題の階層を考える!
経営分析
→財務事例の環境分析
財務事例の対応方法
以上から導き出した解答:
①
(a)売上高総利益率
(b)25.08%
(c)長所が生じた原因は、高い縫製加工技術を有し、大手Y社のOEM生産や自社ブランドの海外輸出により、収益性が高いためである。60字
②
(a)有形固定資産回転率
(b)2.65回
(c)短所が生じた原因は、中核都市の駅前に本社を構え、隣地の不動産を買い増ししたことにより、資産効率が悪くなったためである。59字
③
(a)自己資本比率
(b)25.56%
(c)短所が生じた原因は、隣地の不動産を買い増しする際、長期借入金を中心に資金調達したことで、資本の安定性が低下したためである。61字
2010年6月4日金曜日
事例問題にしがみつく方法(平成21年度 生産・技術 第4問)
生産・技術事例の最後、第4問だ。生産・技術事例は苦手に思っている人も多いと思うが、慣れてくると一番得点がしやすい科目だと思う。SWOTの部分は【C社の概要】にほぼ記載されているし、各設問に使用する与件文も段落毎に固まっているため、指摘すべき問題点などは特定しやすい。問題点を特定できたら設問に素直に対応して、読み手(報告を受ける社長)に分かりやすく要約するだけだ。
第4問(配点10点)
C社の自社製品は見込生産であり、現在製品化を進めようとしているOEM製品は受注生産で対応する予定である。C社の見込生産と受注生産の違いを、重視すべき情報と管理ポイントの視点から80字以内で述べよ。
まず題意から考えよう!
題意:C社の見込生産と受注生産の違いを述べよ。
解答の骨子
例1:違いは、~である。具体的には、
①見込生産は~である。
②受注生産は~である。
例2:①見込生産は~である。②受注生産は~である。
→今回は80字と字数が少ないため、例2を採用する。
次に制約条件を考える!
制約条件:①見込生産と受注生産の違い、②重視すべき情報と管理ポイントの視点から
1次知識:見込生産と受注生産
→見込生産
①事前に需要を見込んで一定量の最終製品を生産し、製品在庫から出荷する生産形態
②需要予測、在庫管理がポイント
→受注生産
①受注してから納期に間に合うように生産し、製品が完成するとすぐ出荷する生産形態
②余力管理、進捗管理、納期管理、生産リードタイムの短縮がポイント
情報系の問題は問われたことに素直に答えることが大事
→違いは~、重視すべき情報は~、管理ポイントは~である。
与件を活用する!
「この生産ロットサイズは営業部門の月販売予測数をどの製品も上回っている」
→販売予測数量の正確な情報が必要
「しかし、製品によっては欠品が発生し、販売先に即納できないこともしばしば生じている」
→在庫量を適正化して欠品を無くすことが必要、販売先への即納体制構築が必要
「製造部門の責任者は生産計画の変更、それに伴う原材料の確保、各工程能力の調整、外注工場への生産依頼など、その日その日の調整作業に追われている」
→生産計画の変更、各工程能力の調整など調整作業をするため、各工程の余力情報や進捗情報が必要
「生産着手から生産完了までのリードタイムは、最短のもので半月、最長のものでは1カ月半となっている」
→生産リードタイムの短縮が必要
「このため、注文の際に製品在庫が不足している場合には、納品までに1カ月以上顧客を待たせる事態も時には生じているが、幸いにも欠品により注文がキャンセルされる確率は低い」
→顧客対応を迅速化するため、正確な納期管理が必要
問題の階層を考える!
情報と管理の問題
→情報系はマーケティング戦略を考慮に入れる
→毎年必ず1問は出ているので、解答のパターンを覚えることがポイント
進捗情報を納期回答などに活用して顧客対応力を強化する方向性を考える
生産・技術事例の対応方法
以上から導き出した解答:
見込生産と受注生産の違いを明確に述べる
1次知識と与件の活用
第4問(配点10点)
C社の自社製品は見込生産であり、現在製品化を進めようとしているOEM製品は受注生産で対応する予定である。C社の見込生産と受注生産の違いを、重視すべき情報と管理ポイントの視点から80字以内で述べよ。
まず題意から考えよう!
題意:C社の見込生産と受注生産の違いを述べよ。
解答の骨子
例1:違いは、~である。具体的には、
①見込生産は~である。
②受注生産は~である。
例2:①見込生産は~である。②受注生産は~である。
→今回は80字と字数が少ないため、例2を採用する。
次に制約条件を考える!
制約条件:①見込生産と受注生産の違い、②重視すべき情報と管理ポイントの視点から
1次知識:見込生産と受注生産
→見込生産
①事前に需要を見込んで一定量の最終製品を生産し、製品在庫から出荷する生産形態
②需要予測、在庫管理がポイント
→受注生産
①受注してから納期に間に合うように生産し、製品が完成するとすぐ出荷する生産形態
②余力管理、進捗管理、納期管理、生産リードタイムの短縮がポイント
情報系の問題は問われたことに素直に答えることが大事
→違いは~、重視すべき情報は~、管理ポイントは~である。
与件を活用する!
「この生産ロットサイズは営業部門の月販売予測数をどの製品も上回っている」
→販売予測数量の正確な情報が必要
「しかし、製品によっては欠品が発生し、販売先に即納できないこともしばしば生じている」
→在庫量を適正化して欠品を無くすことが必要、販売先への即納体制構築が必要
「製造部門の責任者は生産計画の変更、それに伴う原材料の確保、各工程能力の調整、外注工場への生産依頼など、その日その日の調整作業に追われている」
→生産計画の変更、各工程能力の調整など調整作業をするため、各工程の余力情報や進捗情報が必要
「生産着手から生産完了までのリードタイムは、最短のもので半月、最長のものでは1カ月半となっている」
→生産リードタイムの短縮が必要
「このため、注文の際に製品在庫が不足している場合には、納品までに1カ月以上顧客を待たせる事態も時には生じているが、幸いにも欠品により注文がキャンセルされる確率は低い」
→顧客対応を迅速化するため、正確な納期管理が必要
問題の階層を考える!
情報と管理の問題
→情報系はマーケティング戦略を考慮に入れる
→毎年必ず1問は出ているので、解答のパターンを覚えることがポイント
進捗情報を納期回答などに活用して顧客対応力を強化する方向性を考える
生産・技術事例の対応方法
以上から導き出した解答:
見込生産と受注生産の違いを明確に述べる
1次知識と与件の活用
見込生産は販売予測数量の情報が重視され、適正な在庫量の管理がポイントである。受注生産は各工程の余力情報や進捗情報が重視され、正確な納期の管理がポイントである。79字
※「生産リードタイムの短縮」について述べたいが、字数の関係で管理ポイントを「正確な納期の管理」とした。
2010年6月1日火曜日
事例問題にしがみつく方法(平成21年度 生産・技術 第3問)
さて、第3問だ。C社のOEM事業推進について問われている。OEMに関しては平成13年度にも登場しており、生産・技術事例において重要なテーマとなっている。OEMの特徴については1次テキストでしっかり確認し、メリット・デメリットについてまとめておきたい。
第3問(配点40点)
C社では、大手インテリア用品小売チェーンからOEM製品の取引要請があり、共同で製品化を進めようとしている。
(設問1)
大手インテリア用品小売チェーンとのOEM製品取引は、C社にとってどのようなメリットがあるのかについて80字以内で述べよ。
(設問2)
C社のOEM事業推進において考えられる課題とその対応策について120字以内で述べよ。
まず題意から考えよう!
リード文の題意:OEM製品の取引を進めようとしている。
(設問1)
題意:OEM製品取引は、C社にとってどのようなメリットがあるのかについて述べよ。
解答の骨子
例:メリットは、①~、②~、である。
(設問2)
題意:C社のOEM事業推進の課題とその対応策について述べよ。
解答の骨子
例:C社の課題は~である。その対応策は、①~、②~、である。
※具体的な事柄を述べるときは、因果関係に注意して書くようにする。
→「~により、~である」「~のため、~である」という表現を使う。
次に制約条件を考える!
リード文の制約条件:
①大手インテリア用品小売チェーンからOEM製品の取引要請があった。
②C社と大手インテリア用品小売チェーンが共同で製品化
→リード文の制約条件は忘れがちになるので注意する。
→今回の設問ではいずれもC社のことについて問われていた。
※もし「C社」という単語が設問中から無くなれば・・・
→C社だけではなく大手小売りチェーンに対するメリットや対応策を考える場合もある。
(設問1)
制約条件:大手インテリア用品小売チェーンとのOEM製品取引
(設問2)
制約条件:C社のOEM事業推進において
→1次知識:OEMの特徴
※特徴を聞かれたら、メリット・デメリットで答える。
※4Pの視点で考えると以下の通りになる。
OEMのメリット
・供給先の販売チャネルが利用できる
・プロモーション費用が節約できる
OEMのデメリット
・販売価格、利益率が低下する恐れがある
・自社ブランドが認知されにくくなる
・ノウハウ・技術が流出する危険性がある
与件を活用する!
(設問1)
「現在、この有力販売先の一つである大手インテリア用品小売チェーンから、OEM製品の取引打診があり、先方から製品アイデアの提供を受けて製品化を進めようとしている」
→大手小売チェーンの製品アイデアを製品化に活用できる
「現在進めようとしている大手インテリア用品小売チェーンからのOEM製品受注が現実のものになると、年間で約1割程度の売り上げ増が見込まれている」
→OEM製品受注が現実のものになると、売り上げ増が見込まれる
「新製品開発情報は、各営業担当者がそれぞれ担当する販売先の小売店から消費者の嗜好、要望などを情報として入手し、製品開発・設計部門に提案している。このような新製品に関する多くの提案によって、積極的な新製品開発を進めており、その結果、現在の自社ブランド製品は」
→消費者の嗜好、要望が直接入手できない。
→C社独自の十分な新製品開発ができない可能性がある。
→C社の自社ブランドイメージが希薄化する。
※ブランドにおけるOEMのデメリット⇒今回は解答に加えないこととした。
(設問2)
「毎月中旬に開かれる営業部門との製販会議で翌月の販売予測数量が提示され、生産計画では、それを参考に翌月の生産品目、生産順が決められている。生産計画作成後は、営業部門との定期的な情報交換は行われていない」
→生産計画作成後は、営業部門との定期的な情報交換は行われていない
進捗管理を行い、営業部門との定期的な情報交換により納期回答を行う
「日々の作業指示は第1工程の部品切断加工着手日を計画して指示するが、その後の工程の作業指示は特になく、現場対応で進められている。生産着手から生産完了までのリードタイムは、最短のもので半月、最長のものでは1カ月半となっている。このため、注文の際に製品在庫が不足している場合には、納品までに1カ月以上顧客を待たせる事態も時には生じているが、幸いにも欠品により注文がキャンセルされる確率は低い」
→着手日を指示するが、その後の工程の作業指示は特にない
工程毎の作業指示を適切に行う
→生産着手から生産完了までのリードタイムは、最短半月、最長1カ月半となっている
→納品までに1カ月以上顧客を待たせる事態も時には生じている
納期から遡って工程毎の作業完了日を把握する
「現在進めようとしている大手インテリア用品小売チェーンのOEM製品では、従来の見込生産とは違い、受注生産で一括納品する方向であり、受注後の納期の回答が求められる」
→OEM製品は、見込生産ではなく受注生産
→一括納品、受注後の納期の回答が求められる
問題の階層を考える!
OEM製品取引の課題や対応策
→具体的な対策が聞かれたら生産・技術戦略レベル
→ただし、OEM製品取引という新規事業も含むので経営戦略レベルに近いか?
生産・技術事例の対応方法
以上から導き出した解答:
(設問1)
与件に書かれているメリットを要約しただけ
(設問2)
問題点は否定的な表現、課題は肯定的な表現
対策は問題点の裏返し、できるだけ具体的に
第3問(配点40点)
C社では、大手インテリア用品小売チェーンからOEM製品の取引要請があり、共同で製品化を進めようとしている。
(設問1)
大手インテリア用品小売チェーンとのOEM製品取引は、C社にとってどのようなメリットがあるのかについて80字以内で述べよ。
(設問2)
C社のOEM事業推進において考えられる課題とその対応策について120字以内で述べよ。
まず題意から考えよう!
リード文の題意:OEM製品の取引を進めようとしている。
(設問1)
題意:OEM製品取引は、C社にとってどのようなメリットがあるのかについて述べよ。
解答の骨子
例:メリットは、①~、②~、である。
(設問2)
題意:C社のOEM事業推進の課題とその対応策について述べよ。
解答の骨子
例:C社の課題は~である。その対応策は、①~、②~、である。
※具体的な事柄を述べるときは、因果関係に注意して書くようにする。
→「~により、~である」「~のため、~である」という表現を使う。
次に制約条件を考える!
リード文の制約条件:
①大手インテリア用品小売チェーンからOEM製品の取引要請があった。
②C社と大手インテリア用品小売チェーンが共同で製品化
→リード文の制約条件は忘れがちになるので注意する。
→今回の設問ではいずれもC社のことについて問われていた。
※もし「C社」という単語が設問中から無くなれば・・・
→C社だけではなく大手小売りチェーンに対するメリットや対応策を考える場合もある。
(設問1)
制約条件:大手インテリア用品小売チェーンとのOEM製品取引
(設問2)
制約条件:C社のOEM事業推進において
→1次知識:OEMの特徴
※特徴を聞かれたら、メリット・デメリットで答える。
※4Pの視点で考えると以下の通りになる。
OEMのメリット
・供給先の販売チャネルが利用できる
・プロモーション費用が節約できる
OEMのデメリット
・販売価格、利益率が低下する恐れがある
・自社ブランドが認知されにくくなる
・ノウハウ・技術が流出する危険性がある
与件を活用する!
(設問1)
「現在、この有力販売先の一つである大手インテリア用品小売チェーンから、OEM製品の取引打診があり、先方から製品アイデアの提供を受けて製品化を進めようとしている」
→大手小売チェーンの製品アイデアを製品化に活用できる
「現在進めようとしている大手インテリア用品小売チェーンからのOEM製品受注が現実のものになると、年間で約1割程度の売り上げ増が見込まれている」
→OEM製品受注が現実のものになると、売り上げ増が見込まれる
「新製品開発情報は、各営業担当者がそれぞれ担当する販売先の小売店から消費者の嗜好、要望などを情報として入手し、製品開発・設計部門に提案している。このような新製品に関する多くの提案によって、積極的な新製品開発を進めており、その結果、現在の自社ブランド製品は」
→消費者の嗜好、要望が直接入手できない。
→C社独自の十分な新製品開発ができない可能性がある。
→C社の自社ブランドイメージが希薄化する。
※ブランドにおけるOEMのデメリット⇒今回は解答に加えないこととした。
(設問2)
「毎月中旬に開かれる営業部門との製販会議で翌月の販売予測数量が提示され、生産計画では、それを参考に翌月の生産品目、生産順が決められている。生産計画作成後は、営業部門との定期的な情報交換は行われていない」
→生産計画作成後は、営業部門との定期的な情報交換は行われていない
進捗管理を行い、営業部門との定期的な情報交換により納期回答を行う
「日々の作業指示は第1工程の部品切断加工着手日を計画して指示するが、その後の工程の作業指示は特になく、現場対応で進められている。生産着手から生産完了までのリードタイムは、最短のもので半月、最長のものでは1カ月半となっている。このため、注文の際に製品在庫が不足している場合には、納品までに1カ月以上顧客を待たせる事態も時には生じているが、幸いにも欠品により注文がキャンセルされる確率は低い」
→着手日を指示するが、その後の工程の作業指示は特にない
工程毎の作業指示を適切に行う
→生産着手から生産完了までのリードタイムは、最短半月、最長1カ月半となっている
→納品までに1カ月以上顧客を待たせる事態も時には生じている
納期から遡って工程毎の作業完了日を把握する
「現在進めようとしている大手インテリア用品小売チェーンのOEM製品では、従来の見込生産とは違い、受注生産で一括納品する方向であり、受注後の納期の回答が求められる」
→OEM製品は、見込生産ではなく受注生産
→一括納品、受注後の納期の回答が求められる
問題の階層を考える!
OEM製品取引の課題や対応策
→具体的な対策が聞かれたら生産・技術戦略レベル
→ただし、OEM製品取引という新規事業も含むので経営戦略レベルに近いか?
生産・技術事例の対応方法
以上から導き出した解答:
(設問1)
与件に書かれているメリットを要約しただけ
(設問2)
問題点は否定的な表現、課題は肯定的な表現
対策は問題点の裏返し、できるだけ具体的に
(設問1)
メリットは、①大手小売チェーンの製品アイデア提供により、製品化を進めることができる点、②大手小売チェーンのOEM製品受注により、売り上げ増が見込まれる点である。80字
(設問2)C社の課題は、受注後の納期回答や一括納品が可能な受注生産体制を構築する事である。その対応策は、①工程毎の作業終了日を納期から正確に把握し作業指示を適切に行う。②工程毎の進捗管理を行い営業部門と定期的に情報交換することで納期回答の精度を高める。121字
※課題に「OEM生産で埋没しがちなC社のブランドイメージを維持すること」も浮かんだが生産・技術事例ということもあり、生産体制の構築を優先した。
登録:
投稿 (Atom)