2010年2月8日月曜日

事例問題にしがみつく方法(平成21年度 マーケティング・流通 第4問)

 さて、ラスト第4問だ。

第4問(配点30点)
 B社はインターネットを使って自社のPRだけではなく地域内外の人々と何らかのコミュニケーションを図ろうとしている。それはどのようなものが考えられるか、150字以内で答えよ。

まず題意から考えよう!
題意:インターネットを使ったPR・コミュニケーション手段にはどのようなものが考えられるか
 解答の骨子
  例:B社は~(インターネットを使った内容)が考えられる。具体的には、
     ①~(自社のPR)、
     ②~(地域内外の人々とのコミュニケーション)、を図る。
  ※①と②の部分で具体的な事柄を述べるときは、因果関係に注意して書くようにする。
   →「~により、~である」「~のため、~である」という表現を使う。

次に制約条件を考える!
制約条件:①B社はインターネットを使って、②自社のPRだけではなく、③地域内外の人々と何らかのコミュニケーション
 ①B社はインターネットを使って
  →ホームページが基本。具体的な方法は電子掲示板、ブログ、メールマガジンなど。
 ②自社のPRだけではなく
  →顧客ターゲットに対して有益なものをアピールする視点
 ③地域内外の人々と何らかのコミュニケーション
  →地域外:史跡や街中の寺院に興味を持つ観光客を対象にしよう。
  →地域内:市民マラソンに出場するランナーを対象にしよう。
  →コミュニケーションを図る:双方向の情報のやり取りが必要。

与件を活用する!
地域外の人々
 「X市は大都市近郊にあり、人口30万人を抱え、古くから城下町として栄えてきた歴史と文化や伝統を持つ商業都市である
 「市の中心に位置する城跡公園は市民に親しまれているだけではなく、史跡や街中の寺院を訪れる観光客の数も多い
 「100年ほど前の大火事の経験から、耐火建築の蔵造りが注目され、今日の『蔵造りの町並み』が築かれている」
   →城跡公園、蔵造りの町並み、史跡や寺院などのX市の歴史と文化について興味を持っている人々への情報配信

地域内の人々
 「B社が毎月発行するミニコミ誌やホームページには、地元スポーツの試合結果が掲載されている」
 「『健康』と『観光』を融合させ、『歴史と文化を走りぬけよう』というテーマで、城跡公園がスタートとゴールになり、5kn 、10km、ハーフマラソンの距離別で、初心者、親子から本格的ランナーまでが楽しめる大会を目指している」
 「特に5kmでは高齢者の参加希望者が多い
   →市民マラソンを走るランナーへの情報配信
     B社おすすめのマラソン用品の紹介:自社のPR
     市民マラソンのコースの紹介

問題の階層を考える!
 インターネットを使ったコミュニケーション:プロモーション
  →マーケティング戦略レベル
 マーケティング・流通事例の対応方法
 究極の切り口は、外部と内部



以上から導き出した解答:
 題意:解答の骨子をそのまま活用
 電子掲示板は最近見かけない、メールマガジンは双方向通信ができない、ブログなら情報配信と顧客のコメントという双方向通信可能
 切り口
  外部:情報の流れ 社内→社外 情報配信
  内部:情報の流れ 社外→社内 コメントの収集およびその対応


B社は、ブログの活用が考えられる。具体的には、①地域外の人には史跡や寺院などのX市の歴史と文化について、地域内の人にはB社おすすめのマラソン用品や市民マラソンのコースについての情報を発信し、②ブログに寄せられた閲覧者からのコメントにきめ細かく対応することで、地域内外の人々とコミュニケーションを図る。150文字




 今回で、マーケティング事例は終了だ。なかなか要約力を求められる問題が多かった。普段から、日経新聞の春秋などを題材に文章の要約を練習している人は、優位に問題を解くことができたことだろう。最近の事例は、解答の際に30字や40字程度で短くまとめさせることが多い。このため、春秋をまとめる際も40字程度にまとめる練習をした方が良いのではないだろうか?この際、きちんと40字のマス目を作って、文章をまとめる練習をした方がいい。あと何字でマス目が埋まるのかが直感的にわかるようになるからだ。
 また、事例の文章中「特に」とか「特徴」という強調を示す文字や「しかし」などの論点を切り替えている部分は要注意だ。この部分に解答のキーになる文章が含まれていることが多いからだ。こういった文字が出てきたら、グリグリにマーキングして注意を促そう。

2010年2月7日日曜日

事例問題にしがみつく方法(平成21年度 マーケティング・流通 第3問)

 第3問を解いてみよう。この問題は、はじめにリード文があり設問1と設問2に分かれている問題だ。こういう問題では、設問1を解いている間はリード文を意識しているが、設問2を解く段階になってリード文の存在を忘れてしまう危険性があるので注意しよう。設問の題意と制約条件を考える段階で、リード文の制約条件は、設問1と設問2に目立つように書き留めておくことがポイントだ。試験終了間際になると、リード文のことなんてすっ飛んでいるはずだ。忘れてはいけない部分は、余裕があるうちにあらかじめメモをとって目立つようにしておこう!

第3問(配点40点)
 B社は顧客の拡大と自社へのロイヤルティ(愛顧)を高めるために新しい事業を考えている。どのような事業が考えられるか
(設問1)
 B社は自社だけで行えるサービス事業を考えている。それはどのようなものか、120字以内で答えよ。
(設問2)
 B社は商店街の裏通りにある銭湯との共同事業を考えている。どのようなサービス事業が考えられるか、120字以内で答えよ。

まず題意から考えよう!
リード文の題意:B社の新しい事業にはどのような事業が考えられるか

(設問1)
題意:自社だけで行えるサービス事業はどのようなものか
 解答の骨子
  例1:サービス事業は〜である。具体的には、
     ①〜、
     ②〜、である。
  例2:B社が自社だけで行うサービス事業は、①〜、②〜である。

(設問2)
題意:銭湯と共同で行うサービス事業はどのようなものか
 解答の骨子
  例1:サービス事業は〜である。具体的には、
     ①〜、
     ②〜、である。
  例2:銭湯と共同で行うサービス事業は、①〜、②〜である。

  ※①と②の部分で具体的な事柄を述べるときは、因果関係に注意して書くようにする。
   →「〜により、〜である」「〜のため、〜である」という表現を使う。

次に制約条件を考える!
リード文の制約条件:顧客の拡大と自社へのロイヤルティ(愛顧)を高めるために
  →設問1で「顧客の拡大」を設問2で「自社へのロイヤルティ(愛顧)を高める」を決めゼリフにしようと決める。

(設問1)
制約条件:B社は自社だけで行える
 解答の終わりの表現は、リード文の言葉を活用する。
  →〜をすることで、顧客の拡大を図る。
 B社だけで行えるサービス
  →B社のリソースを活用する。
   「目に見えない資源」…専門知識、ノウハウ・技術、顧客の信用など
   「小規模特性」…地域密着力、顧客対応力、対面販売力など
    モノ:本店裏にかつて倉庫と駐車場であった土地を保有
    ヒト:地域の学校や団体との関係性、従業員の顧客対応力

(設問2)
制約条件:銭湯との共同事業
 解答の終わりの表現は、リード文の言葉を活用する。
  →〜をすることで、自社へのロイヤルティ(愛顧)を高める。
 銭湯との共同事業でできるサービス
  →B社と銭湯のリソースを活用する。
  →B社が毎月発行するミニコミ誌やホームページ:情報提供のノウハウ
  →銭湯の社交場としての存在意義を忘れない。

与件を活用する!
第1問と第2問の解答を踏まえる。

(設問1)
ターゲット顧客を拡大する視点
 「なおB社は、本店裏にかつて倉庫と駐車場であった土地を保有しており、その再利用を考えている
   →再利用を考えているなら活用する方向で。
 「B社本店には、市内の草野球リーグやママさんバレーボールリーグの事務局が置かれ試合会場の手配などをB社はボランティアで引き受けている
   →試合会場の手配などはノウハウとして蓄積しているはず。
 「最近では、大学生を中心にフットサルの人気が高まり市内でリーグ戦ができるほどにチーム数も増えている
   →フットサルの練習やリーグ戦をできるようにしたら大学生の顧客が拡大しそうだ。
 「フットサル(futsal)は〜ジュニアから中高年、女性まで気軽に参加できるスポーツとして人気が出てきている
   →初心者向けのサービスも何かしたいよね。

(設問2)
ロイヤルティ(愛顧)を高める視点
 「ランナー達の悩みは、着替えとシャワーであるが、商店街の裏通りにある銭湯がランナー達のニーズに応えている
   →ランナー達の悩みに答える。着替えとシャワーは絶対必要!
 「また、夕方になると銭湯が社交場となって、グループ同士で近隣の居酒屋へ出掛けていく者たちも多い」
 「しかし、この銭湯は昔から人気があり、高齢者を中心に数多くの人々が利用してきた
   →「しかし」は重要語句
 「ランナー達がこの銭湯を利用することが増えるにつれ、銭湯が非常に混み合ってきている
   →混雑解消!新たな社交場をつくる必要があるよね。
 「そこで、この銭湯は何か事業ができないか模索している」

問題の階層を考える!
 顧客の拡大と自社へのロイヤルティ(愛顧)を高める
  →具体的な方策が聞かれたら、マーケティング戦略レベル
 マーケティング・流通事例の対応方法



以上から導き出した解答:
 設問1はフットサル、設問2はランナーについて記述する。

(設問1)
 自社だけで行えるサービス事業
 第1問、第2問の解答も踏まえよう!
  →本店裏の土地を再利用する
  →アマチュア志向の需要にも対応すること
  →ジュニアや女性の初心者向けサービス、大学生のリーグ戦等に対するサービス

自社だけで行うサービス事業は、本社裏の土地をピッチとして再利用したフットサル事業である。具体的には、①ジュニアや女性等の初心者に対してフットサル教室を開催し、②市内の大学生チームに練習の場やリーグ戦の会場を提供することで、顧客の拡大を図る。120字


(設問2)
 B社と銭湯との共同サービス事業
 第1問、第2問の解答も踏まえよう!
  →高齢者に対してのサービスも加えたい。
 何よりもランナーの悩み解消を考えよう!
  →着替えとシャワー設備は銭湯のノウハウを活用できる。
  →社交場としての機能はB社の情報提供のノウハウを活用できる。

銭湯と共同で行うサービス事業は、ランナー支援事業である。具体的には、①ランナーの悩みに答えるため、本社裏の土地に着替えとシャワーができる設備をつくり、②市民マラソンの情報発信や高齢者等との情報交換の場を提供することで、自社への愛顧を高める。120字

2010年2月5日金曜日

事例問題にしがみつく方法(平成21年度 マーケティング・流通 第2問)

 さて、次は第2問だ。制限文字数が30字と短くなっているため、要約力が求められる問題だ。普段から、文章の要約練習をしておくことが重要だ。

第2問(配点10点)
 B社が需要拡大のためにこれからターゲットとすべき顧客層とはどのようなものか。30字以内で2つ答えよ。

まず題意から考えよう!
題意:これからターゲットとすべき顧客層とはどのようなものか
 解答の骨子
  例:①~(顧客層)である。②~(顧客層)である。
  ※30字なので、主語を書く余裕はない。
  ※語尾を揃えることで、2つの文章の比較が容易となり、文章が理解しやすくなる。

次に制約条件を考える!
制約条件
:B社が需要拡大のために
 需要拡大→需要が増加している部分に着目する!

与件を活用する!
需要の増加を示している与件文章を探す
第1問で指摘した差別化要因を忘れない→「アマチュア志向の需要」「高齢者等」

 「大学生を中心にフットサルの人気が高まり、市内でリーグ戦ができるほどにチーム数も増えている
 「それに伴いフットサル用品の需要も増えてきている
 (【フットサル】の説明より)「ジュニアから中高年、女性まで気軽に参加できるスポーツとして人気が出てきている」
   →フットサルで決まり!具体的な顧客は、第1問を意識して答える。
     地域の学校や団体との関係性:フットサルを始めたばかりの大学生
     アマチュア志向の需要:ジュニア(から中高年)、女性
     ※「中高年」は2つ目の答えの「高齢者」に含める。

 「出社前や昼休み、そして早朝や夕方に公園周辺をウォーキングやジョギングする人が増えている
 「週末や休日になると、さらにその人数は増加しており、高齢者の割合が増えてきている
 「このようなランナー達のグループ作りが盛んになっており、企業や大学のサークルだけではなく
 「ハーフマラソンの距離別で、初心者、親子から本格的ランナーまでが楽しめる大会を目指している。特に5kmでは高齢者の参加希望者が多い
   →ランナーで決まり!具体的な顧客は、第1問を意識して答える。
     アマチュア志向の需要:初心者、親子、(企業や大学のサークル)
     高齢者等に対して提案販売:高齢者
     ※「企業や大学のサークル」は1つ目の「大学生」に含める。
     ※「特に」という言葉は要注意語句!

問題の階層を考える!
 ターゲット顧客:ドメイン「誰に」「何を」「どのように」の「誰に」
  →経営戦略レベル
 環境分析・経営戦略レベルで必要な知識



以上から導き出した解答:
 題意:ターゲット顧客は、自社の強みが活かせる顧客とする
 第1問の強みも考慮の上、ターゲット顧客を挙げる


フットサルを気軽に楽しみたい大学生、ジュニア、女性等である。30字


城郭公園の周辺を走る高齢者やマラソンの初心者、親子等である。30字

2010年2月4日木曜日

事例問題にしがみつく方法(平成21年度 マーケティング・流通 第1問)

 さて、マーケティング事例を始めよう。マーケティング事例は、自社の強みを顧客のニーズにうまく対応させて、競合と差別化を図ることが重要だ。試験委員である岩崎 邦彦先生の著書、「スモールビジネス・マーケティング」では中小小売業のコア基盤を次の3つに分けている。「目に見える資源」、「目に見えない資源」、「小規模特性」だ。具体的な内容は、以下の通りだ。

  コア基盤
  a. 「目に見える資源」…設備、人手、資金など
  b. 「目に見えない資源」…専門知識・独自の経験、ノウハウ・技術、顧客の信用・ブランド
  c. 「小規模特性」…真空地帯の対応力、変化対応力、地域密着力、対面販売力、個性化力

ここではさらに「目に見えない資源」と「小規模特性」を融合させることで持続的競争優位性が築かれると説明している。つまり中小小売業では、「目に見えない資源」と「小規模特性」を強みとして捉え、大手競合との差別化戦略を考えていくことになる。
 さて、それでは第1問から解いていくことにしよう。

第1問(配点20点)
 ショッピングセンター内の2つの競合店に対してB社の強みを活かした差別化戦略は、具体的にどのようなものか。80字以内で2つ答えよ。

まず題意から考えよう!
題意:B社の強みを活かした差別化戦略は、具体的にどのようなものか
 解答の骨子
  例1:B社の強みを活かした差別化戦略は、〜である。具体的には、競合店に対して〜である。
  例2:競合店に対するB社の差別化戦略は、〜である。
  ※80字なので、一文40字でニ文で答えるのが理想的だ。あまりに長い文だと読み難くなるので、短文で区切って記述する方が良い。
  ※今回は、主語の部分を長くしたので、一文で解答している。

次に制約条件を考える!
制約条件:ショッピングセンター内の2つの競合店に対して
 SC内には2つのスポーツ用品店があり、1つは大手チェーンのスポーツ用品店で、もう1つはファッション重視のスポーツ用品店である
 「大手チェーンのスポーツ用品店」と「ファッション重視のスポーツ用品店」に対する差別化戦略を考える。

与件を活用する!
B社の強み:
 「本店を含めいずれの店舗においても、地域の学校や団体との関係を深め、緻密な商品供給とサービスに力を入れてきた
 「従業員の顧客対応に関しても住民からの評判が良かった
2つの競合店の特徴
 「大手チェーンのスポーツ用品店は、各種スポーツのプロ志向の需要にも応えようとする品揃えをしている」
   →差別化:アマチュア志向の需要にも対応する
 「もう1つのスポーツ用品店は、若者向けスポーツカジュアルのファッションに重点を置いた品揃えを行っている」
   →差別化:高齢者に重点を置く

問題の階層を考える!
 強みについての設問→環境分析レベル
 環境分析・経営戦略レベルで必要な知識



以上から導き出した解答:
 題意:例2を使用
 差別化するなら2つの競合店の裏返しを考える
 顧客対応とくれば、提案営業でしょ。

大手スポーツ用品店に対するB社の差別化戦略は、地域の学校や団体との関係で培った緻密な商品供給とサービス力を活かして、アマチュア志向の需要にも対応することである。80字


ファッション重視のスポーツ用品店に対するB社の差別化戦略は、住民からの評判が良い従業員の顧客対応力という強みを活かして、高齢者等に対して提案販売をすることである。81字