第4問(配点20点)
D社は、Y社への売り上げは円建てで支払いを受けているが、海外に輸出する自社製品の支払いは上期末と下期末の2回に分けて米ドルで受け取っている。この為替リスクをヘッジするため、D社は、通常、各半期の期首に予想売上高分の為替予約を行っている。平成21年度上期分は1ドル100円で500万ドルの為替予約(ドルの売り建て)を行った。
(設問1)
平成21年度の上期の売上高は、予想を下回り430万ドルであった。上期末の為替のスポットレートは102円であった。この場合の為替による損益を求めよ(単位:万円)。
(設問2)
D社では、オプションを用いて為替リスクをヘッジすることも検討している。1ドル100円で決済するためには、どのようなオプションを用いるべきか、50字以内で(a)欄に説明せよ。
また、オプションを用いた場合の長所と短所を100字以内で(b)欄に説明せよ。
まず題意から考えよう!
題意:
(設問1)
為替による損益を求めよ
(設問2)
(a)どのようなオプションを用いるべきか説明せよ
(b)オプションを用いた場合の長所と短所を説明せよ
解答の骨子 (設問2)について
(a)例:D社は、~のようなオプションを用いるべきである。
※50字なので1文で記述する。
→要約力を強化しよう!
(b)例:オプションを用いた場合の長所は、~である。短所は、~である。
※具体的な理由を述べるときは、因果関係に注意して書くようにする。
→ここでは「~することで、~の点である」という表現を使った。
次に制約条件を考える!
リード文の制約条件:
①海外に輸出する自社製品の支払い
上期末と下期末の2回に分けて米ドルで受け取っている
②この為替リスクをヘッジするため
各半期の期首に予想売上高分の為替予約
平成21年度上期分は1ドル100円で500万ドルの為替予約(ドルの売り建て)
制約条件:
(設問1)
①平成21年度の上期の売上高は、予想を下回り430万ドル
②上期末の為替のスポットレートは102円
③単位:万円
(設問2)
(a)(b)オプションを用いて為替リスクをヘッジする
(a)1ドル100円で決済するため
解答へのアプローチ!
(設問1)
平成21年度上期分は1ドル100円で500万ドルの為替予約
実際の売上高430万ドル⇒70万ドルが不足
上期の為替レートは1ドル102円、このレートで70万ドル調達する
70万×102円=7,140万円
この70万ドルを為替予約レート1ドル100円で売ることになる
70万×100円=7,000万円
差し引き140万円の為替差損となる
(設問2)
前提知識:過去問まとめ資料より(平成13年 第3問 設問2)
コールオプション:買い手に対して「買う」権利を与えるもの
プットオプション:買い手に対して「売る」権利を与えるもの
アメリカンタイプ:権利行使期間内の営業日であればいつでも権利行使が可能
ヨーロピアンタイプ:約定の権利行使日(確定日)にのみ権利行使が可能
輸入業者:外国通貨のコールオプションを購入する。
→円高:権利放棄、円安:権利行使
輸出業者:外国通貨のプットオプションを購入する。
→円高:権利行使、円安:権利放棄
(a)
D社は輸出業者
→外国通貨のプットオプションを購入する
→外国通貨は米ドル
→1ドル100円で決済する(制約条件より)
(b)
D社は輸出業者
→円高:権利行使、円安:権利放棄
→円高:権利行使
利益は「円高による為替差益-オプションの購入料」⇒利益減少:短所
→円安:権利放棄
損失は「オプションの購入料のみ」⇒円安による為替差損の回避:長所
問題の階層を考える!
経営分析
→経営指標:売上高総利益(利益率)、為替差損による収益減少リスクの低減
財務事例の対応方法
以上から導き出した解答:
(設問1)
-140(万円)
(設問2)
(a)D社は為替リスクをヘッジするため、1ドル100円で決済できる米ドルのプットオプションを用いるべきである。51字
(b)オプションを用いた場合の長所は、円安になった場合、権利放棄することで損失がオプション料分だけに抑制できる点である。短所は、円高になった場合、権利行使をすることでオプション料分の利益が減少する点である。100字
今回で財務事例は、終了だ。やはり経営分析でいかに得点が得られるかが、合格の成否を握ると感じた。経営分析は毎年必ず出題されており、傾向も大体同じだ。過去問を繰返し解くことで、経営指標の選択方法や経営分析独特の言い回しを覚えていくといいだろう。
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