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2010年6月17日木曜日

平成21年度 組織・人事事例 問題

与件全文
 A社は、地方都市W市に拠点をおく菓子メーカーである。資本金4,000万円、店舗数15店舗で、前年売上高約12億円、従業員はパート・アルバイト社員を含めて130名程度である。もともと、地元で採れた農産物を主原料とした地産地消の安全安心な菓子づくりをモットーに和菓子をメインに評判を得てきた老舗菓子メーカーである。1年半ほど前に、事業拡大を企図して地元の洋菓子メーカーF社を傘下に収め、今日に至っている。
 F社を傘下に収める以前、A社はW 市市内の工場で生産した菓子を、地元デパートや県内の観光名所にある10店舗で販売していた。販売員を含め120名程度の従業員のうち80%近くが、パート・アルバイト社員であった。
 A社社長が創業者の先代社長から事業を引き継いで以降、A社の売り上げはほぼ横ばいであった。地元限定の地産地消のビジネスモデルでは、現状以上の市場拡大が望めないと判断した成長志向の強いA社社長は、4年ほど前に大都市圏市場への進出を計画し、すぐさまそれを実現した。大都市圏内のデパート進出に際してW市地区産の原材料にこだわる一方で、市場や噂好の違いに配慮して創作菓子にも取り組み、地元の店とは違った店舗コンセプトも打ち出した。地元農家と専属契約を結び原材料の確保を図ると同時に、社内コンテストの開催社外の菓子職人やコンサルタントへの依頼などによって新しい創作菓子の開発に積極的に取り組んだ。初めてデパートで採用した創作菓子では、工場から半製品を輸送して売場の顧客の目の前で完成品に仕上げる手法を取り入れた。
 さらに、大都市圏市場の拡大を目指すA社社長は、高級スーパーへの納品にも挑戦した。当初取引に難色を示していた高級スーパーも、物産展での試験販売が好評であったことから取引を承諾した。
こうした大都市圏進出によって、A社の亮上高は20%程度伸張し、9億円を超えるまでに成長した。この成功の要因のひとつは、原材料重視というコンセプトが消費市場の食の安全に対する意識や自然志向の高まりにマッチしたことである。また、同じ時期に開始したインターネットを活用した通信販売も思いのほか反響が大きく、A社の業績を高めただけでなく、A社と契約していたW市周辺地区の特産品とその生産農家の知名度を高めることにもなった。
 確かに、こうした大都市圏での事業展開は成長をもたらしたが、同時に生産体制や販売体制の整備などで新たな対応が求められた。地方都市と比べて競争が激しく市場ニーズの変化が速い大都市圏では新奇さを打ち出すことが必要で、定期的に目先を変える新作菓子を生み出す体制の整備が課題となってきた。とはいえ、これまでW 市地区特産原材料へのこだわりを武器に事業展開してきたA社に、卓越した商品開発のノウハウが備わっていたわけではなかった
 他方、大都市圏での事業展開など事業拡大を模索している中で、A社と取引のある地元のG信用金庫からF社の買収の具体的な話が持ち込まれていた。幾度となく提示された案件であったが、A社社長は逡巡していた。A社に買収される直前のF社は、資本金1,000万円、従業員数50名(うちパート・.アルバイト社員約20名含む)、売上高約3億円で、市内に店舗併設工場を2カ所所有していた。創業当初からF社に勤めていた菓子職人の技術がその評判を支え、A社同様、W 市周辺のデパートや観光名所などに12店舗を出店していた。しかし、2000年以降、W市郊外にも次々と大規模なショッピングセンターがオープンし有名洋菓子店が出店したために、周辺の競争は一挙に激化した売り上げが3年間で30%近く落ち込んでしまったF社は、パート・アルバイト社員を中心に人員整理を断行した。その上、後継者問題か顕在化し事業継続を断念せざるを得なくなってしまった。G信用金庫の強い後押しもあって、最初の提案から2年以上の年月を経てA社社長はF社の買収を決定することになる。
 完全所有の子会社としてA社社長がF社のトップも兼任し、2つのブランドを継続させた。F社を傘下に取り込んだ後、A社社長は、地元に展開していた両社の店舗ネットワークの再編に取り組んだ。早期に経営体質の強化を図るために、両社で重複している売場の整理統合死に筋商品の排除売れ筋商品への絞り込みによって経費削減を進めた。また、生産ラインにもメスを入れた。F社の工場1つも閉鎖されそこで生産を統括していた洋菓子職人の1人と数人の職人がA社の工場に配置転換され、その他の職人はF社のもう1つの工場に残った。最終的に、A社とF社の従業員40名程度の人員整理を実施した
 しかし、昨年来の景気低迷で、消費市場はますます厳しさを増し、大都市圏でのデパートや高級スーパーの事業も大幅に落ち込んだ。A社の売り上げも、W 市地域ではF触買収前の売上高にまで落ち込む月も見られるようになった。大都市圏のデパート・スーパーに当初から投入していた商品の売り上げに支えられ、かろうじて営業を続けているが、こうした厳しい状況が続くと大都市圏事業の見直しをも迫られるのが実情である。


第1問(配点20点)
 F社を買収する以前のA社、およびA社に買収される以前のF社は、それぞれW市周辺で有力な菓子メーカーであった。和菓子、洋菓子といった取扱商品に違いがあるもののA社とF社の強みには、どのような違いがあると考えられるか。150字以内で述べよ。

第2問(配点20点)
 金融機関の後押しがあったにもかかわらず、当初、A社社長は、F社を傘下に収めることに対して、積極的、前向きではなかった。その理由として、どのようなことが考えられるかF社が直面していた財務上の問題以外で考えられる点について、100字以内で述べよ。

第3問(配点20点)
 A社がF社を傘下に収めた結果、買収されたF社の従業員に比べて、買収したA社の従業員のモラールが著しく低下してしまった。両社の人事構成を踏まえた上でその理由について、100字以内で述べよ

第4問(配点20点)
 A社社長は、生産体制を見直す際に、F社出身のベテランの洋菓子職人をA社工場の責任者に任命した。こうした施策を講じることによって、どのような成果や効果を期待したと考えられるか。100字以内で述べよ。

第5問(配点20点)
 現在、A社は、地元市場の不振と、景気低迷に伴う大都市圏事業の縮小といった厳しい経営状況に直面している。急速な業績回復が期待できない中で、短期的に売り上げを増進させるための具体的施策について、中小企業診断士として助言を求められた。どのような助言を行えばよいか、150字以内で述べよ。

2010年1月31日日曜日

事例問題にしがみつく方法(平成21年度 組織・人事 第5問)

さて、いよいよ第5問目について解答する。組織・人事事例最後の問題だ。

平成21年度 組織・人事事例

第5問(配点20点)
 現在、A社は、地元市場の不振と、景気低迷に伴う大都市圏事業の縮小といった厳しい経営状況に直面している。急速な業績回復が期待できない中で、短期的に売り上げを増進させるための具体的施策について、中小企業診断士として助言を求められた。どのような助言を行えばよいか、150字以内で述べよ。

まず題意から考えよう!
題意:短期的に売り上げを増進させるための具体的施策について、どのような助言を行えばよいか
 解答の骨子
  例1:助言は、〜である。具体的施策は、
     ①~、
     ②~することで短期的に売り上げを増進させることである。
  例2:短期的に売り上げを増進させるため、
     ①~、
     ②~、という施策を助言する。
  ※①と②の部分で具体的な事柄を述べるときは、因果関係に注意して書くようにする。
   →「~により、~である」「~のため、~である」という表現を使う。

次に制約条件を考える!
制約条件
 ・地元市場の不振→地元はダメ、新しい市場を考える必要がある
 ・大都市圏事業の縮小→大都市圏での成長は期待できない、立地条件を武器にできない
 ・急速な業績回復が期待できない中で、短期の売り上げを増進させる
   →即効性のある施策が必要、外部環境悪化により内部資源の強化が必要
 ・中小企業診断士として→一次知識、白書の知識、客観性と論理性、多面的な視点
 A社の強みである「インターネットを活用した通信販売」の強化を行う方向性か?
  理由①:立地条件に関係なく、全国の市場に商品を販売できるため。
  理由②:現在、すでに通信販売を行っており短期に販売体制が強化できるため。

与件を活用する!
 「社内コンテストの開催社外の菓子職人やコンサルタントへの依頼などによって新しい創作菓子の開発に積極的に取り組んだ」
  →社内の能力開発、社外リソースの活用による能力開発は可能:能力開発の視点
 「大都市圏市場の拡大を目指すA社社長は、高級スーパーへの納品にも挑戦した」
  →高級化による売り上げの確保
 「販売体制の整備などで新たな対応が求められた」
  →販売体制の整備が必要
 「死に筋商品の排除売れ筋商品への絞り込み」→この表現は覚えておく!
  →基本的な商品の絞り込みは対策済み、これ以外で売上高向上策を探す
 「大都市圏のデパート・スーパーに当初から投入していた商品の売り上げに支えられ、かろうじて営業を続けている」
  →新たな売り上げをつくる商品の投入が必要

短期的に売り上げを増進させる:

 組織・人事の視点→販売員の能力開発
 マーケティングの視点→売上=客数×客単価、顧客生涯価値・リピーター率の向上

以上をまとめると…
 →①社外のコンサルタントによる社内研修や社内コンテストを活用した能力開発により販売員のスキルを向上させて販売体制を整備する。
 →②高級スーパー向けの商品と新奇な商品を定期的に打ち出すことにより客単価とリピーター率を向上させてインターネットの通信販売を強化する。

問題の階層を考える!
 短期的に売り上げを増進させる→商品を販売するのは人→人事戦略レベル
 人事戦略は、モラール向上と能力開発の視点で考える。
 モラール向上策は第3問で解答済み→今回は能力開発の視点で。

 能力開発→計画的・継続的な視点で行う。
  OJT(仕事を通じての技能継承)
  Off-JT(社外研修)
  自己啓発(奨励金、社内表彰制度と絡める)



以上から導き出した解答:
 題意:例2を使用
 組織・人事(能力開発)とマーケティングの視点
 能力開発の切り口はOJT、Off-JT、自己啓発

短期的に売り上げを増進させるため、①社外のコンサルタントによる社内研修や社内コンテストを活用した能力開発により販売員のスキルを向上させて販売体制を整備し、②高級スーパー向けの商品と新奇な商品を定期的に打ち出すことにより客単価とリピーター率を向上させてインターネットの通信販売を強化することを助言する。150字



 やっと、組織・人事事例が終わった。与件全文を見て欲しい。色のついた部分が解答で参考にした部分だ。全体に渡ってほぼ均等に色が付いていると思う。与件の文章に無駄な部分はないのである。もし、解答する上で参考にしていない部分がある場合は、解答の方向性が間違っている可能性があるので注意すべきだ。
 解答する上で最も重要な事は、設問の題意にしたがって素直に解くことである。なるべく、設問や与件に書かれている言葉通りに引用して解答をつくり、「A社社長」に対して診断結果を報告するのだ。

2010年1月29日金曜日

事例問題にしがみつく方法(平成21年度 組織・人事 第4問)

 それでは、第4問目を解いてみよう。高度な専門用語は必要としない。頼れるものは「2次のキーワード」と「事例の対応方法」だけだ。

平成21年度 組織・人事事例

第4問(配点20点)
 A社社長は、生産体制を見直す際に、F社出身のベテランの洋菓子職人をA社工場の責任者に任命した。こうした施策を講じることによって、どのような成果や効果を期待したと考えられるか。100字以内で述べよ。

まず題意から考えよう!
題意:A社社長は、どのような成果や効果を期待したと考えられるか
 解答の骨子
  例1:A社社長は、①成果として~、②効果として~、を期待したと考えられる。
  例2:A社社長は、①~、②~、という成果や効果を期待したと考えられる。
  ※①と②の部分で具体的な事柄を述べるときは、因果関係に注意して書くようにする。
   →「~により、~である」「~のため、~である」という表現を使う。
    (ただし、今回は、因果関係の表現は使わなかった。)

次に制約条件を考える!
制約条件:F社出身のベテランの洋菓子職人をA社工場の責任者に任命による成果や効果
 成果や効果を期待している→A社社長は、「あるべき姿」とのギャップを感じている
  →ギャップを形成しているA社の問題点を探せ!
 「効果」というだけでも良いところ、「成果や効果」とあえて2つ挙げている
  →少し気になる…。
 切り口を「成果」と「効果」にすべきか?
  広辞苑より
   成果:なしえたよい結果。
   効果:ある行為によって得られた、期待通りのよい結果。
  ある成果によって何らかの効果が発生する感じ?良く分からない…。
 切り口にはせず、「成果や効果」と一緒にしてごまかす。
  →「~という成果や効果を期待したと考えられる。」という表現でいいや。

与件を活用する!
A社の問題点
:A社社長は、この問題点を克服して「あるべき姿」になることを期待した。
 「確かに、こうした大都市圏での事業展開は成長をもたらしたが、同時に生産体制や販売体制の整備などで新たな対応が求められた
 「地方都市と比べて競争が激しく市場ニーズの変化が速い大都市圏では新奇さを打ち出すことが必要で」
 「定期的に目先を変える新作菓子を生み出す体制の整備が課題となってきた
 「A社に、卓越した商品開発のノウハウが備わっていたわけではなかった
 「そこで生産を統括していた洋菓子職人の1人と数人の職人がA社の工場に配置転換され、その他の職人はF社のもう1つの工場に残った」
 →新奇さや目先を変えた新作菓子を生み出す体制の整備ができていない
 →卓越した商品開発のノウハウが備わっていない

問題の階層を考える!
 あからさまな組織戦略の問題が見当たらない→この問題が組織戦略か?
 体制の整備が課題→組織戦略レベルとしても良いのでは…?
 組織戦略は、組織構造組織文化の視点で考える。
  組織構造:新作菓子が生産できる組織体制
  組織文化:商品開発のノウハウが継承できる組織文化



以上から導き出した解答:
 題意:例2を使用
 与件文から問題点を抽出→克服へ
 組織戦略の切り口そのまま

A社社長は、①ベテランの洋菓子職人によって卓越した商品開発のノウハウが継承できる組織文化の醸成と、②新奇さや目先を変えた新作菓子が生産できる組織体制の整備、という成果や効果を期待したと考えられる。98字

2010年1月28日木曜日

事例問題にしがみつく方法(平成21年度 組織・人事 第3問)

 それでは、第3問目を解いてみよう。

平成21年度 組織・人事事例

第3問(配点20点)
 A社がF社を傘下に収めた結果、買収されたF社の従業員に比べて、買収したA社の従業員のモラールが著しく低下してしまった。両社の人事構成を踏まえた上でその理由について、100字以内で述べよ

まず題意から考えよう!
題意
:その理由について、100字以内で述べよ
 解答の骨子
  例1:理由は、~のためである。具体的には、
     ①~のため、
     ②~のため、である。
  例2:両社の人事構成は~である。モラール低下の理由は、~のためである。

  ※例1の①と②の部分で具体的な理由を述べるときは、因果関係を明確に書くようにする。
   →「~により、~であるため」「~することで、~になるため」という表現を使う。

次に制約条件を考える!
制約条件:両社の人事構成を踏まえた上で
 A社の人事構成とF社の人事構成を比較する。

与件を活用する!
A社の人事構成(買収前):
 「従業員はパート・アルバイト社員を含めて130名程度である」
 「販売員を含め120名程度の従業員のうち80%近くが、パート・アルバイト社員であった」
  →「パート・アルバイト社員」は字数が多いため「非正規社員」と表現する。
  →A社は80%近くが非正規社員である。
F社の人事構成(買収前):
 「従業員数50名(うちパート・.アルバイト社員約20名含む)
 「売り上げが3年間で30%近く落ち込んでしまったF社は、パート・アルバイト社員を中心に人員整理を断行した
  →F社は買収前の人員整理により正規社員が多い。
買収後のA社の人事構成:
 「そこ(閉鎖されたF社の工場)で生産を統括していた洋菓子職人の1人と数人の職人がA社の工場に配置転換され、その他の職人はF社のもう1つの工場に残った。最終的に、A社とF社の従業員40名程度の人員整理を実施した
  →買収後の人員整理はA社の非正規社員を中心に行われたと考えられる。

問題の階層を考える!
 A社の従業員のモラールについて→人事戦略レベル
  各事例の対応方法 組織・人事事例
 人事戦略は、モラール向上と能力開発の視点で考える。
 モラール向上策は動機づけ衛生理論の視点で考える。
 動機づけ衛生理論
  動機づけ要因:達成すること、承認されること、仕事そのもの、責任、昇進など
  衛生要因  :会社の政策と管理方式、監督、給与、対人関係、作業条件など
 A社の従業員のモラールが著しく低下していることから、A社の衛生要因が悪化している方向性を記述する。
  →作業条件の悪化により、A社の従業員のモラールが著しく低下した。



以上から導き出した解答:
 題意:例2を使用
 与件文をまとめる
 人事戦略の考え方から決め台詞を探す


A社は80%近くが非正規社員であり、F社は買収前の人員整理により正規社員が多い。モラール低下の理由は、買収後の人員整理がA社の非正規社員を中心に行われ、A社の従業員が作業条件の悪化を強く感じた為である。100字

2010年1月26日火曜日

事例問題にしがみつく方法(平成21年度 組織・人事 第2問)

 前回に続き、第2問目を解いてみよう。高度な専門用語は必要としない。頼れるものは「2次のキーワード」と「事例の対応方法」だけだ。

※PDFのOCR機能により与件文を引っ張ってきていますので、誤字があるかもしれません。申し訳ありません。

平成21年度 組織・人事事例

第2問(配点20点)
 金融機関の後押しがあったにもかかわらず、当初、A社社長は、F社を傘下に収めることに対して、積極的、前向きではなかった。その理由として、どのようなことが考えられるかF社が直面していた財務上の問題以外で考えられる点について、100字以内で述べよ。

まず題意から考えよう!
題意
:その理由として、どのようなことが考えられるか?
 解答の骨子
  例1:理由は、①~であるため、②~であるため、と考えられる。
  例2:F社を傘下に収めることに対して、積極的、前向きではない理由は、
     ①~であるため、
     ②~であるため、と考えられる。
  ※理由を述べるときは、納得性を高めるため2つ以上の理由を挙げる。
  ※例1は①と②の部分で因果関係を明確に書くようにする。
   →「~により、~であるため」「~することで、~になるため」という表現を使う。
  ※例2は書くことがうまく思い浮かばなくて、マス目を埋めるのに困った時に使う。
   →例1に比べてマス目を27文字分多く使用している。

次に制約条件を考える!
制約条件
:F社が直面していた財務上の問題以外で考えられる点について
 「売り上げが3年間で30%近く落ち込んでしまった」という与件は使えない。

与件を活用する! ※「しかし」と書かれた部分は要チェック!
A社社長が、F社を傘下に収めることに対して、積極的、前向きではなかった理由:
 ①「和菓子をメインに評判を得てきた老舗菓子メーカーである」
  「2つのブランドを継続させた
  →洋菓子メーカーを買収することで、和菓子老舗ブランドの希薄化を恐れたため
 ②「しかし、2000年以降、W市郊外にも次々と大規模なショッピングセンターがオープンし有名洋菓子店が出店したために、周辺の競争は一挙に激化した。」
  →有名洋菓子店が出店したことで、競争が激化したため
 ③「早期に経営体質の強化を図るために、両社で重複している売場の整理統合、死に筋商品の排除と売れ筋商品への絞り込みによって経費削減を進めた」
  「F社の工場1つも閉鎖され
  →売場や工場等の内部資源が重複することで、経費が増大するため

問題の階層を考える!
 経営理念・経営戦略などの上位レベル
 「A社社長の思い」は要チェック項目!



以上から導き出した解答:
 題意:例1を使用
 該当する与件文をただまとめるだけ

理由は、①洋菓子メーカーを買収することで、和菓子老舗ブランドの希薄化を恐れたため、②有名洋菓子店が出店したことで、競争が激化したため、③売場や工場等の内部資源が重複することで、経費が増大するためである。101字

2010年1月25日月曜日

事例問題にしがみつく方法(平成21年度 組織・人事 第1問)

 実際の事例問題について考えていこう。今回から述べる勉強法のコンセプトは、「事例問題にしがみついて解答を絞り出すにはどうするか?」ということだ。問題を解いていると「何を答えて良いかわからない!」という状況に必ず出くわす。このような場合でも、前回までに述べた「2次のキーワード」と「事例の対応方法」によって答えをひねり出そうという企画だ。限られた知識、時間との戦いの中で、解答用紙のマス目を全て埋めるにはどうしたらよいかを考える初心者向け企画だ。

※前回までは、ヒアリングに対する診断報告書上の答えという意味で「回答」という文字を使っていたが、今回からは、問題を解く上での答えという意味で「解答」という文字を使用する。

平成21年度 組織・人事事例

第1問(配点20点)
 F社を買収する以前のA社、およびA社に買収される以前のF社は、それぞれW市周辺で有力な菓子メーカーであった。和菓子、洋菓子といった取扱商品に違いがあるもののA社とF社の強みには、どのような違いがあると考えられるか。150字以内で述べよ。

まず題意から考えよう!
題意:A社とF社の強みには、どのような違いがあると考えられるか?
 解答の骨子
  例1:A社とF社の強みには、~のような違いがある。具体的には、
     ①A社の強みは~であり、
     ②F社の強みは~であるといった違いがある。
  例2:強みにおけるA社とF社の違いは、
     ①A社は、~という強みを持ち、
     ②F社は、~という強みを持つことである。

次に制約条件を考える!
制約条件:和菓子、洋菓子といった取扱商品に違いがあるものの
 取扱商品に対する違いは使用できない。

与件を活用する!
A社の強み:
 「もともと、地元で採れた農産物を主原料とした地産地消の安全安心な菓子づくりをモットーに、和菓子をメインに評判を得てきた老舗菓子メーカーである」
 「地元農家と専属契約を結び原材料の確保を図ると同時に」
 「この成功の要因のひとつは、原材料重視というコンセプトが消費市場の食の安全に対する意識や自然志向の高まりにマッチしたことである。また、同じ時期に開始したインターネットを活用した通信販売も思いのほか反響が大きく、A社の業績を高めた
 「これまでW 市地区特産原材料へのこだわり武器に事業展開してきた」
F社の強み:
 「創業当初からF社に勤めていた菓子職人の技術がその評判を支え」

問題の階層を考える!
 強みについての設問→環境分析レベル
 対応方法
  各事例の対応方法 環境分析と経営戦略
 究極の切り口(内部・外部)
  内部:
   強みを強化する→目に見えない経営資源の強化
   弱みを克服する→管理体制の強化、経営資源の有効活用
  外部:
   市場面への対応→顧客ニーズへの対応、顧客関係性の強化
   競合面への対応→差別化による競争優位性の獲得



以上から導き出した解答
 題意:例2を使用
 与件文をまとめる:強みは、「~力」という表現を使うとまとめやすい
 切り口:外部と内部

強みにおけるA社とF社の違いは、①A社は、食の安全、自然志向という消費市場のニーズにマッチしたW市地区産のこだわりの原材料調達力とインターネットを活用した通信販売力という外部環境に対する強みを持ち、②F社は、創業当初からの評判を支える菓子職人の技術力という内部資源に対する強みを持つことである。147字

 ・・・うーん、なんとも微妙な感じだが、設問や与件の文章をできるだけ活用して解答を作ってみた。

2010年1月14日木曜日

各事例の対応方法 組織・人事事例

組織・人事 事例

事例問題を解く際は、全事例共通して次の順番で考察していく。
 1.事例会社(社長)の経営理念を確認する。
 2.SWOT分析による外部環境分析と内部資源分析を行う。
 3.経営戦略(ドメイン)の設定を行う。
 4.事業戦略の構築および機能別戦略の構築を行う。
組織・人事事例の場合は、「4.」の段階で組織戦略と人事戦略を考えることになる。

組織戦略

組織構造
 組織戦略は、「部門、階層、権限、コミュニケーション」の視点で効率的な組織運営を可能とする組織構造と良好な組織文化の形成を目的とする。
 組織構造は、機能別組織、事業部別組織、マトリックス組織などが代表的なものだ。そのメリットとデメリットを考えると以下のようになる。

組織構造のメリット・デメリット
 機能別組織
  メリット :各部門の専門性向上、命令系統の一元化、規模の経済性の追求
  デメリット:部門間のセクショナリズム、トップの負担増大、意思決定の遅れ
 事業部別組織
  メリット :意思決定の迅速化、利益責任の明確化、経営人材の育成、トップは戦略に専念可能
  デメリット:事業部間連携の低下、経営資源の重複、短期的利益の追求、全社利益より事業部利益を優先
 マトリックス組織
  メリット :環境変化への柔軟な対応
  デメリット:部門間調整の複雑化、命令系統の混乱

 事例で組織構造上の問題点が述べられていた場合は、この組織構造のメリット・デメリットを考慮の上、別の組織構造へ移行することを考える。この場合、現状の組織構造におけるデメリットを述べ、別の組織構造へ移行する際のメリットを理由に効率的な組織運営ができることをアピールするのだ。

組織文化
 組織文化は、組織の中で共有された行動原理や思考様式のことだ。事例上、組織文化に問題があると指摘された場合は、以下のキーワードを使用して記述すると回答しやすい。

組織文化の問題点における着目点
 社長のリーダーシップ
 バーナードの組織成立3要素:共通目的、貢献意欲、コミュニケーション

 経営理念(ビジョン)のもと、社長のリーダーシップによって問題を克服していく視点と組織成立の3要素である「共通目的、貢献意欲、コミュニケーション」を切り口にして問題を多面的に分析する視点が、良好な組織文化を形成する上で重要なポイントだ。

人事戦略
 人事戦略は、「雇用、人事考課、賃金、教育訓練」の視点で従業員のモラール向上と専門的知識や技能を習得するための能力開発を行い、顧客対応力を高めることを目的とする。

モラール向上策
 モラール向上を考える際には、動機づけ衛生理論を切り口に持ってくると考えがまとまりやすい。

動機づけ衛生理論
 動機づけ要因:達成すること、承認されること、仕事そのもの、責任、昇進など
 衛生要因  :会社の政策と管理方式、監督、給与、対人関係、作業条件など

 考えやすくするために、もう少し単純なモデルに変更しよう。たくさん項目があっても、試験上でとっさに出てこなければ意味はない。動機づけ要因と衛生要因に該当する具体的な制度をあらかじめ考えておくと使いやすいだろう。ここでは、以下のように考えた。
 動機づけ要因は評価にまつわる項目だ。このため、「評価基準の明確化」を問題解決策として挙げておこう。また、衛生要因は給与や作業条件にまつわる項目だ。このため、「業績連動型賃金」を問題解決策として挙げておこう。このように、問題点をあらかじめ想定して準備しておくと回答時間の短縮に役立つ。

モラール向上→動機づけ衛生理論
 動機づけ要因:評価基準の明確化(透明性・公平性・納得性)
 衛生要因  :業績連動型賃金

能力開発
 能力開発は、「OJT、Off-JT、自己啓発」の3つの視点で考えていく。OJTは職場の上司や先輩が部下や後輩に対し、具体的な仕事を通じて行う教育訓練、Off-JTは通常の業務を一時的に離れて行う教育訓練、自己啓発は自己をより高い段階へ上昇させようとする自主的な活動のことだ。
 業務上必要なスキル等の不足については、事例の状況に応じて「OJT、Off-JT、自己啓発」をうまく組み合わせて回答していく。
 ここでのキーワードは「計画的・継続的」である。長期的な視野に立って能力開発を行う必要性を訴えるのだ。

能力開発→計画的・継続的な視点で行う
 OJT
 Off-JT
 自己啓発